2021年05月10日
マロン、傘で飛ぶ!
一体、どうしたって言うんでしょう?あのマロンが、空を飛べなくなってしまったと言うのです。少しご飯を食べ過ぎて太り気味なのは間違いありませんが、飛べなくなった理由は、それだけではなさそうです。「僕は、今まで通りにしているんだけど…」と、マロンは言うのですが、マロンの体はまったく宙に浮こうとしません。自慢の耳だって、今まで通りに広げているし、短い足でのパタパタ走りだって、どこと言って変わった様子もありません。
パジャマを着た魔女のキャサリンは、そんなマロンを見て、「決定力不足ね」と、未だにW杯を引きずっているようなことを言っていました。「キャサリンさん。僕は、今までと、まったく同じようにしているつもりだよ。力いっぱい走って、耳を広げて、思い切りジャンプ…。だけど、全然、体が浮かないんだ。FWとしては失格だよね」と、マロンもかなり引きずったことを言っていました。「モチベーションの問題?」。
マロンは、キャサリンさんを訪ねて、誰も知らない森の奥の奥に出かけました。「キャサリンさん。お願いがあるんだけど…。僕にも空飛ぶ箒が作れるかなあ?」と、マロンは切り出しました。「まあ、マロン。相当、悩んでいるようね?飛べなくなったのは、あの日の朝からでしょう?精神的な問題が大きいと思うけどね」と、キャサリンは言いました。「でも、いいわ。マロン用の小さくて軽いコウモリ傘を作りましょう」「傘?」「そう。傘は傘でもコウモリ傘よ。魔女だって、最初から箒に乗って飛んだりできないのよ。初心者は、コウモリ傘からね」。
「まず、どうすればいいの?」と、マロンが聞きました。「材料のコウモリは、こんな時のために、私が飼っているわ」と、キャサリンが言いました。「ええ、嫌な予感…。コウモリ傘って、あのコウモリから作るの?」と、マロンが聞きました。「ピンポーン!当たりよ、マロン。あのコウモリで作るの。さあ、決まったら、早く、早く!」と、キャサリンが言いました。「私も久しぶりの傘作りだわ。子どもの頃に帰ったみたい…」。「キャサリンさん。僕、コウモリの傘って、あまり気が進まないんだけど…」と、マロンが言いました。「大丈夫よ。心配しなくても。私だって、子どもの頃には作ったんだから…」「いや、そういう意味じゃあなくて…」「どういう意味かしら?」「その…。コウモリを…、殺しちゃうんでしょう?」「そんなことするわけないでしょう!傘の柄に、コウモリを縛り付けるのよ。もちろん、よーく、お願いしてね」。
キャサリンが大きなコウモリを5匹連れて来ました。コウモリは目を開いたままで眠っているように見えました。「真っ黒だね」と、マロンが言いました。「そうよ。体も羽も目も真っ黒よ。おまけにお腹の中も真っ黒…」と、キャサリンが言いました。「ええ。お腹が黒いの?」「ホホホ。冗談よ。でも、美味しくはないわよ」「食べたの?」「そう。お腹に薬草をいっぱい詰めてね。ホホホ。これも冗談よ」。
古い傘の柄に、コウモリをしばりました。1羽2羽3羽4羽…。一番大きな羽と尖った耳のコウモリは、少し長めの紐で真ん中にしばりました。コウモリは、相変わらず目を開いたままで眠っていました。「さあ、できた!」と、キャサリンが言いました。「ええ?これだけなの?」と、マロンが聞きました。「そうよ。簡単でしょう?それとも、何か不満でも…?」と、キャサリンがコウモリ傘をマロンに渡しました。「どうすれば飛べるの?」と、マロンは傘を高くかざしてみました。それでも、コウモリたちは眠ったままです。「ここで、コウモリの目を覚ます呪文が必要なの」と、キャサリンがクチャクチャに畳まれた羊皮紙のメモのようなものを取り出しました。「えーと。コウモリを起こすには…と。えーと。コウモリ、コウモリ…。『塩と胡椒で軽く下味を付けて…』と、これは調理のレシピね。ああ、こっちだわ。さあ、少し長いけど覚えてね。いい?行くわよ」と、キャサリンが言いました。「火の子、風の子、岩の子、闇の子、神の子、翼の子…」。「キノコ、タケノコ?」と、マロンは聞きました。「タラコに明太子?」。「違う、違う。火の子、風の子…」「僕、きっと覚えられない」「じゃあ、とにかく傘を持ってごらんなさい」と、キャサリンは言いました。マロンは、もう一度、傘を高く掲げました。
「ウー、ガウガウ!」と、マロンが吠えました。眠っていたコウモリは一斉に目を覚まし、慌てて羽ばたきました。「何だ?」「誰が吠えたんだ?」と、コウモリたちは口々に叫びながら、羽ばたきました。「わぁ、重たい」と、真ん中のコウモリが言いました。マロンはもう一度「ガウガウ!」と吠えました。「逃げろ!」「オオカミかも知れない」と、コウモリたちは、一段と強く羽ばたきました。驚きました。マロンの体が浮き始めました。両手で傘の柄をつかみ「ガウガウ!」と吠えると、マロンの体はフワリフワリと漂い始めました。「ほら、飛べた!」と、キャサリンが言いました。
キャサリンは、箒にまたがってマロンの後を追いかけました。「キャサリンさん。僕、何だか、カッコ悪いよね?」と、マロンが言いました。「いいえ。そんなことないわよ」と、キャサリンが言いました。「そうかなあ?僕、何だか、風船につかまって空を飛んでいる『くまのプーさん』みたいだもん」。マロンはしっかりと傘の柄を握り締めました。「ホホホ。プーさんというよりも、ヘディングシュートを決めた太めのロナウドみたいよ」と、キャサリンが冷やかしました。「やっぱり、少し太り過ぎね」。「ガウガウ!」。
パジャマを着た魔女のキャサリンは、そんなマロンを見て、「決定力不足ね」と、未だにW杯を引きずっているようなことを言っていました。「キャサリンさん。僕は、今までと、まったく同じようにしているつもりだよ。力いっぱい走って、耳を広げて、思い切りジャンプ…。だけど、全然、体が浮かないんだ。FWとしては失格だよね」と、マロンもかなり引きずったことを言っていました。「モチベーションの問題?」。
マロンは、キャサリンさんを訪ねて、誰も知らない森の奥の奥に出かけました。「キャサリンさん。お願いがあるんだけど…。僕にも空飛ぶ箒が作れるかなあ?」と、マロンは切り出しました。「まあ、マロン。相当、悩んでいるようね?飛べなくなったのは、あの日の朝からでしょう?精神的な問題が大きいと思うけどね」と、キャサリンは言いました。「でも、いいわ。マロン用の小さくて軽いコウモリ傘を作りましょう」「傘?」「そう。傘は傘でもコウモリ傘よ。魔女だって、最初から箒に乗って飛んだりできないのよ。初心者は、コウモリ傘からね」。
「まず、どうすればいいの?」と、マロンが聞きました。「材料のコウモリは、こんな時のために、私が飼っているわ」と、キャサリンが言いました。「ええ、嫌な予感…。コウモリ傘って、あのコウモリから作るの?」と、マロンが聞きました。「ピンポーン!当たりよ、マロン。あのコウモリで作るの。さあ、決まったら、早く、早く!」と、キャサリンが言いました。「私も久しぶりの傘作りだわ。子どもの頃に帰ったみたい…」。「キャサリンさん。僕、コウモリの傘って、あまり気が進まないんだけど…」と、マロンが言いました。「大丈夫よ。心配しなくても。私だって、子どもの頃には作ったんだから…」「いや、そういう意味じゃあなくて…」「どういう意味かしら?」「その…。コウモリを…、殺しちゃうんでしょう?」「そんなことするわけないでしょう!傘の柄に、コウモリを縛り付けるのよ。もちろん、よーく、お願いしてね」。
キャサリンが大きなコウモリを5匹連れて来ました。コウモリは目を開いたままで眠っているように見えました。「真っ黒だね」と、マロンが言いました。「そうよ。体も羽も目も真っ黒よ。おまけにお腹の中も真っ黒…」と、キャサリンが言いました。「ええ。お腹が黒いの?」「ホホホ。冗談よ。でも、美味しくはないわよ」「食べたの?」「そう。お腹に薬草をいっぱい詰めてね。ホホホ。これも冗談よ」。
古い傘の柄に、コウモリをしばりました。1羽2羽3羽4羽…。一番大きな羽と尖った耳のコウモリは、少し長めの紐で真ん中にしばりました。コウモリは、相変わらず目を開いたままで眠っていました。「さあ、できた!」と、キャサリンが言いました。「ええ?これだけなの?」と、マロンが聞きました。「そうよ。簡単でしょう?それとも、何か不満でも…?」と、キャサリンがコウモリ傘をマロンに渡しました。「どうすれば飛べるの?」と、マロンは傘を高くかざしてみました。それでも、コウモリたちは眠ったままです。「ここで、コウモリの目を覚ます呪文が必要なの」と、キャサリンがクチャクチャに畳まれた羊皮紙のメモのようなものを取り出しました。「えーと。コウモリを起こすには…と。えーと。コウモリ、コウモリ…。『塩と胡椒で軽く下味を付けて…』と、これは調理のレシピね。ああ、こっちだわ。さあ、少し長いけど覚えてね。いい?行くわよ」と、キャサリンが言いました。「火の子、風の子、岩の子、闇の子、神の子、翼の子…」。「キノコ、タケノコ?」と、マロンは聞きました。「タラコに明太子?」。「違う、違う。火の子、風の子…」「僕、きっと覚えられない」「じゃあ、とにかく傘を持ってごらんなさい」と、キャサリンは言いました。マロンは、もう一度、傘を高く掲げました。
「ウー、ガウガウ!」と、マロンが吠えました。眠っていたコウモリは一斉に目を覚まし、慌てて羽ばたきました。「何だ?」「誰が吠えたんだ?」と、コウモリたちは口々に叫びながら、羽ばたきました。「わぁ、重たい」と、真ん中のコウモリが言いました。マロンはもう一度「ガウガウ!」と吠えました。「逃げろ!」「オオカミかも知れない」と、コウモリたちは、一段と強く羽ばたきました。驚きました。マロンの体が浮き始めました。両手で傘の柄をつかみ「ガウガウ!」と吠えると、マロンの体はフワリフワリと漂い始めました。「ほら、飛べた!」と、キャサリンが言いました。
キャサリンは、箒にまたがってマロンの後を追いかけました。「キャサリンさん。僕、何だか、カッコ悪いよね?」と、マロンが言いました。「いいえ。そんなことないわよ」と、キャサリンが言いました。「そうかなあ?僕、何だか、風船につかまって空を飛んでいる『くまのプーさん』みたいだもん」。マロンはしっかりと傘の柄を握り締めました。「ホホホ。プーさんというよりも、ヘディングシュートを決めた太めのロナウドみたいよ」と、キャサリンが冷やかしました。「やっぱり、少し太り過ぎね」。「ガウガウ!」。