2021年08月05日
森暮らし始めませんか?
カチャカチャカチャカチャ・・・と、パソコンのキーボードを叩くリスってかなり珍しいのかも知れません。でも、健ちゃんの飼っているシマリスのカリ(♂)とポリ(♀)は、ときどきクルミを抱えるときのように前かがみになって、キーボードに向かっているところを見ます。何をしているのかって?健ちゃんのお父さんがしているところを見ていて、いつの間にかインターネットを覚えてしまったのです。健ちゃんだって、まだできないのに。もちろん、健ちゃんや健ちゃんの家族には内緒ですが・・・。
この頃、カリが関心を持っているのは、森暮らし。都会のマンション暮らしには、そろそろ疲れてきたと言うのです。「何せ、ここに来て、早いものでもう三年目。本当の森なんて知らないし、森のことを知ったのだって、ネットがあればこそ。ネットがなければ、森とか木とか知らなかったわけだけどね。でもね、憧れちゃうよね、森暮らしって」と、言いました。「私たちの仲間って、誰も本当の森を知らないけど、憧れちゃうわよね、森暮らしって」と、ポリも言いました。「ねえ、ネットで調べてみようか?」と、カリが言いました。「賛成」と、ポリが言いました。
二匹は健ちゃんたちの留守をいいことに、パソコンのスイッチをONにしました。ジャーンと音がして、ウィンドウズXPが立ち上がってきます。「これこれ、このデスクトップの背景が森だったんだよね」「そうそう、これで、初めて森を知ったんだもん」。カリは慣れた手つきで、インターネットに接続しました。検索サイトを呼び出して、キーワードを入力しています。「えーと、『森』『環境』『動物』としてみよう」と、カリ。「わー、出てきた、出てきた」と、ポリが喜んでいます。「どこにしようか?」と、カリ。「『野生動物、植物、風景の写真と解説』だって。バーチャル自然公園じゃあ、ダメだよね。本物でなくっちゃ。『森の減少、森林伐採により、すみかを追われる動物たち』だって。これは落ち込んじゃうよね」と、カリが言いました。「そうだね。暗くなっちゃうよね」と、ポリも言いました。「これは、絵本のサイトだし、こっちはNPO自然保護団体のサイトだって」。「これは、どう?」と、カリがマウスを持つ手を止めました。「『森暮らし始めませんか?』。いつかは森暮らしをと望んでいるウサギたちの支援サイトだって。ウサギかあ?でも、ちょっと覗いてみよう」と、カリはカチカチとクリックしました。
しばらくして、ウェブサイトが呼び出されました。トップページは、腕組みをした野ウサギの動画です。「ほう」と、カリは言いました。「ちょっと。ポリ。ドングリを持ってきて」。カリは、健ちゃんのお父さんのマネをして、片手でドングリを抱えて、カリカリやりながら、クリックしています。「もう、ボロボロこぼしてる。そんなところまで、マネしないでよ」と、ポリ。「森の環境をそれぞれ10段階で評価だって。まずは、安全度ポイントだよね」と、カリは言いました。「どこもここも、結構評価が高いわね。8点や9点が多いようだけど。あっ、ここは10点だ。『近くの森』だって。ワシ・タカ類の生存が確認されていず、極めて安全と考えられる」と、ポリが読み上げました。「うーん」と、二匹はうなってしまいました。「つまり、絶滅危惧種ってわけ?でも、森の理想からは遠いね」と、カリは言いました。
「食料自給度だって、大切なポイントだよね。『少し遠くの森』は、近くにニンジンの畑があって、お百姓さんの目を盗めば、食べ放題。罠にかかったウサギの数が、ここ数年激減なんだって。世間では無農薬指向だから、農薬の使用も減っているようだよ。ニンジン?これは、ウサギ向けの情報だから仕方ないか。ドングリはどうなの?クルミはどうなの?知りたいよね?情報ないよね?」と、カリは言いました。「近くに道の駅があって、人間の残飯が食べ放題?これは、プライドが許さないよね。ウサギにプライドはないのか!」。
「えー、森の中には食べ物もたくさんあり、動物たちにとって暮らしやすい環境が整っているのに、どうして森の中から出てきてしまうんだろう、だって?余計なお世話だよね。このウサギはガチガチの自然崇拝だね、きっと。それに僕たちは、森から出てきたんじゃあないしね」と、今度はストローでジュースを飲みながらカリが言いました。
「森のみどり度はどうなの?」と、ポリが尋ねました。「『かなり遠くの森』が、10点だね。でも、行くまでに、危険なところがいっぱいあるよ。トンネルをいくつも通らなくてはいけないし、川を行くにもダムがあって、船では行けそうもないし、ヘビだっているかも知れない。しかも、世界自然遺産だってさ。きっと、僕たちを狙う鳥とか虫とか動物とかがたくさんいるよ。危険なんじゃあない?」と、カリが首を横に振りました。
「次のポイントは何だろう?健康度って?そうか、歯医者さんがいるとか?そうなんだ。この頃、甘い物の食べ過ぎで、虫歯ができちゃったんだ。街に住んでいると、そうなっちゃうよね」と、カリが言いました。「健康度って、森の健康度なんじゃあないの?ほら、人工林なら間伐がされているかとか、日当たりがいいかとか悪いかとか」と、ポリが言いました。
「ねえ?メールで問い合わせを入れてみない?僕たちが暮らすのに理想の森を探してみようよ」と、カリ。「そうね。じゃあ、条件を言うわよ」と、ポリ。「まず、山全部がドングリとかクルミとか実のなる木であること。それも天然ものがいいよね、植林よりも。ドングリだけじゃあ飽きがくるから、フライドチキンなんかも、たまには食べたいよね。あれって、癖になっちゃうから」と、カリが言いました。「あれって、木になるの?私、近くにコンビニが欲しい。チョコとかスナック菓子とか大好きだから。毎日でも食べていたい。ホント言うとドングリよりもね」と、ポリが言いました。「だから、太るんだよ。少し運動でもしたら?」「ヒトのこと言える?ちょとお、タバコの灰が落ちてる!この際だから言っておくけど、TVの大リーグ中継見ながら、寝そべるのはやめてね」「君だって、韓国リスドラマのコリ様とかに夢中じゃあないか!」と、二匹とも、言うことがめちゃくちゃです。
「仲間はどう?知らないリスと一緒に暮らせる?シマリスだけじゃあなくて、ホンドリスとかタイワンリスなんていうのもいるらしいよ」と、カリが尋ねました。「無理、無理。私、わがままだし、知らないリスとのお付き合いなんて、まっぴらだわ。コリ様は別だけど」と、ポリが答えました。「それに、私、夜真っ暗になると眠れないから、明るいところがいいわ」。「そんな森ないよ」と、カリが言いました。「でも、聞いてみて」と、ポリも譲りません。「ITは欠かせないよね」と、カリが言いました。「それこそ、無理に決まっているじゃない。あなたはネットお宅だから」と、ポリはおかんむりです。「じゃあ、社会のことは、どうやって知るの?ライブドアの証券取引法違反事件の行方とか。新聞?テレビ?やっぱりネットでしょう?」と、カリも怒り気味です。「私たちはリスよ。ライブドアなんて関係ないじゃない。ネットをするリスなんて、そうはいないはずよ」「どうして、そんなこと、分かるの?」「じゃあ、『リス』『ネット』のキーワードで検索してみたら?」。
「冬ごもりはするの?」と、カリ。「ただ眠っているだけでしょう?私は絶対にイヤ。冬でも暖かくなくちゃあ。冷暖房は欲しいな。できればお風呂も。半身浴ってダイエットに最適らしいから。それも温泉?やっぱ、天然よね」と、ポリ。もう、わがままの言い放題です。
結局、二匹は『森暮らし始めませんか?』のサイトに、わがままメールを送信しました。
しばらくして、サイトの管理人の野ウサギから返信がありました。「お問い合わせありがとうございました。ご希望の森は、あなたの住んでいるマンション近くの公園です。ここなら、夜も明るく、コンビニも近いし、理想的だと思われます。フライドチキンの店もありますし、缶ジュースの自販機もあります。ただし、夜、放し飼いにされるミニチュアダックスにだけは、注意してください。ただし、森と呼べるかどうか?」と、書いてありました。「犬はまずいよね?」「犬はダメだわ」と、二匹の意見が一致しました。「生意気で、暴力的だし」「そうそう、エサをあげる人以外には、決して服従しようとはしないし、逃げ込む家が欲しいよね」「健ちゃんの家族と暮らすのが一番か?」「私たちを狙う恐ろしい外敵が住む森よりもね」と、虫歯のカリと小太りのポリの二匹のリスは、健ちゃんの家族と暮らし続けることにしました。ポリはクルクルと車を回しながら、「運動もできるしね」と、言いました。「ネットも使い放題だしね」。
この頃、カリが関心を持っているのは、森暮らし。都会のマンション暮らしには、そろそろ疲れてきたと言うのです。「何せ、ここに来て、早いものでもう三年目。本当の森なんて知らないし、森のことを知ったのだって、ネットがあればこそ。ネットがなければ、森とか木とか知らなかったわけだけどね。でもね、憧れちゃうよね、森暮らしって」と、言いました。「私たちの仲間って、誰も本当の森を知らないけど、憧れちゃうわよね、森暮らしって」と、ポリも言いました。「ねえ、ネットで調べてみようか?」と、カリが言いました。「賛成」と、ポリが言いました。
二匹は健ちゃんたちの留守をいいことに、パソコンのスイッチをONにしました。ジャーンと音がして、ウィンドウズXPが立ち上がってきます。「これこれ、このデスクトップの背景が森だったんだよね」「そうそう、これで、初めて森を知ったんだもん」。カリは慣れた手つきで、インターネットに接続しました。検索サイトを呼び出して、キーワードを入力しています。「えーと、『森』『環境』『動物』としてみよう」と、カリ。「わー、出てきた、出てきた」と、ポリが喜んでいます。「どこにしようか?」と、カリ。「『野生動物、植物、風景の写真と解説』だって。バーチャル自然公園じゃあ、ダメだよね。本物でなくっちゃ。『森の減少、森林伐採により、すみかを追われる動物たち』だって。これは落ち込んじゃうよね」と、カリが言いました。「そうだね。暗くなっちゃうよね」と、ポリも言いました。「これは、絵本のサイトだし、こっちはNPO自然保護団体のサイトだって」。「これは、どう?」と、カリがマウスを持つ手を止めました。「『森暮らし始めませんか?』。いつかは森暮らしをと望んでいるウサギたちの支援サイトだって。ウサギかあ?でも、ちょっと覗いてみよう」と、カリはカチカチとクリックしました。
しばらくして、ウェブサイトが呼び出されました。トップページは、腕組みをした野ウサギの動画です。「ほう」と、カリは言いました。「ちょっと。ポリ。ドングリを持ってきて」。カリは、健ちゃんのお父さんのマネをして、片手でドングリを抱えて、カリカリやりながら、クリックしています。「もう、ボロボロこぼしてる。そんなところまで、マネしないでよ」と、ポリ。「森の環境をそれぞれ10段階で評価だって。まずは、安全度ポイントだよね」と、カリは言いました。「どこもここも、結構評価が高いわね。8点や9点が多いようだけど。あっ、ここは10点だ。『近くの森』だって。ワシ・タカ類の生存が確認されていず、極めて安全と考えられる」と、ポリが読み上げました。「うーん」と、二匹はうなってしまいました。「つまり、絶滅危惧種ってわけ?でも、森の理想からは遠いね」と、カリは言いました。
「食料自給度だって、大切なポイントだよね。『少し遠くの森』は、近くにニンジンの畑があって、お百姓さんの目を盗めば、食べ放題。罠にかかったウサギの数が、ここ数年激減なんだって。世間では無農薬指向だから、農薬の使用も減っているようだよ。ニンジン?これは、ウサギ向けの情報だから仕方ないか。ドングリはどうなの?クルミはどうなの?知りたいよね?情報ないよね?」と、カリは言いました。「近くに道の駅があって、人間の残飯が食べ放題?これは、プライドが許さないよね。ウサギにプライドはないのか!」。
「えー、森の中には食べ物もたくさんあり、動物たちにとって暮らしやすい環境が整っているのに、どうして森の中から出てきてしまうんだろう、だって?余計なお世話だよね。このウサギはガチガチの自然崇拝だね、きっと。それに僕たちは、森から出てきたんじゃあないしね」と、今度はストローでジュースを飲みながらカリが言いました。
「森のみどり度はどうなの?」と、ポリが尋ねました。「『かなり遠くの森』が、10点だね。でも、行くまでに、危険なところがいっぱいあるよ。トンネルをいくつも通らなくてはいけないし、川を行くにもダムがあって、船では行けそうもないし、ヘビだっているかも知れない。しかも、世界自然遺産だってさ。きっと、僕たちを狙う鳥とか虫とか動物とかがたくさんいるよ。危険なんじゃあない?」と、カリが首を横に振りました。
「次のポイントは何だろう?健康度って?そうか、歯医者さんがいるとか?そうなんだ。この頃、甘い物の食べ過ぎで、虫歯ができちゃったんだ。街に住んでいると、そうなっちゃうよね」と、カリが言いました。「健康度って、森の健康度なんじゃあないの?ほら、人工林なら間伐がされているかとか、日当たりがいいかとか悪いかとか」と、ポリが言いました。
「ねえ?メールで問い合わせを入れてみない?僕たちが暮らすのに理想の森を探してみようよ」と、カリ。「そうね。じゃあ、条件を言うわよ」と、ポリ。「まず、山全部がドングリとかクルミとか実のなる木であること。それも天然ものがいいよね、植林よりも。ドングリだけじゃあ飽きがくるから、フライドチキンなんかも、たまには食べたいよね。あれって、癖になっちゃうから」と、カリが言いました。「あれって、木になるの?私、近くにコンビニが欲しい。チョコとかスナック菓子とか大好きだから。毎日でも食べていたい。ホント言うとドングリよりもね」と、ポリが言いました。「だから、太るんだよ。少し運動でもしたら?」「ヒトのこと言える?ちょとお、タバコの灰が落ちてる!この際だから言っておくけど、TVの大リーグ中継見ながら、寝そべるのはやめてね」「君だって、韓国リスドラマのコリ様とかに夢中じゃあないか!」と、二匹とも、言うことがめちゃくちゃです。
「仲間はどう?知らないリスと一緒に暮らせる?シマリスだけじゃあなくて、ホンドリスとかタイワンリスなんていうのもいるらしいよ」と、カリが尋ねました。「無理、無理。私、わがままだし、知らないリスとのお付き合いなんて、まっぴらだわ。コリ様は別だけど」と、ポリが答えました。「それに、私、夜真っ暗になると眠れないから、明るいところがいいわ」。「そんな森ないよ」と、カリが言いました。「でも、聞いてみて」と、ポリも譲りません。「ITは欠かせないよね」と、カリが言いました。「それこそ、無理に決まっているじゃない。あなたはネットお宅だから」と、ポリはおかんむりです。「じゃあ、社会のことは、どうやって知るの?ライブドアの証券取引法違反事件の行方とか。新聞?テレビ?やっぱりネットでしょう?」と、カリも怒り気味です。「私たちはリスよ。ライブドアなんて関係ないじゃない。ネットをするリスなんて、そうはいないはずよ」「どうして、そんなこと、分かるの?」「じゃあ、『リス』『ネット』のキーワードで検索してみたら?」。
「冬ごもりはするの?」と、カリ。「ただ眠っているだけでしょう?私は絶対にイヤ。冬でも暖かくなくちゃあ。冷暖房は欲しいな。できればお風呂も。半身浴ってダイエットに最適らしいから。それも温泉?やっぱ、天然よね」と、ポリ。もう、わがままの言い放題です。
結局、二匹は『森暮らし始めませんか?』のサイトに、わがままメールを送信しました。
しばらくして、サイトの管理人の野ウサギから返信がありました。「お問い合わせありがとうございました。ご希望の森は、あなたの住んでいるマンション近くの公園です。ここなら、夜も明るく、コンビニも近いし、理想的だと思われます。フライドチキンの店もありますし、缶ジュースの自販機もあります。ただし、夜、放し飼いにされるミニチュアダックスにだけは、注意してください。ただし、森と呼べるかどうか?」と、書いてありました。「犬はまずいよね?」「犬はダメだわ」と、二匹の意見が一致しました。「生意気で、暴力的だし」「そうそう、エサをあげる人以外には、決して服従しようとはしないし、逃げ込む家が欲しいよね」「健ちゃんの家族と暮らすのが一番か?」「私たちを狙う恐ろしい外敵が住む森よりもね」と、虫歯のカリと小太りのポリの二匹のリスは、健ちゃんの家族と暮らし続けることにしました。ポリはクルクルと車を回しながら、「運動もできるしね」と、言いました。「ネットも使い放題だしね」。
Posted by AKG(秋葉観光ガイド)の斉藤さん at 05:01│Comments(0)
│森の童話館