2021年05月11日
空飛ぶコウモリ傘
コーギーのマロンは、空飛ぶコウモリ傘に乗って舞い上がりました。コウモリ傘には、5匹の真っ黒コウモリがしばりつけられ、コウモリはそれぞれ、勝手な方向にヒラヒラと飛んで行こうとしました。「ガウガウ!真っすぐに飛んで!」と、マロンは言いました。言われてしばらくはいいのですが、「僕たちは真っすぐに飛ぶのは苦手だから…」と言っているみたいに、コウモリたちはすぐに元の通り。勝手な方向に飛ぼうとします。
「マロン。馬車みたいなものよ。犬ぞりみたいと言えば、もっと分かりやすいかしら?」と、箒にまたがった魔女のキャサリンが言いました。「それぞれのコウモリの癖を覚えて言い聞かせないとね」。「うん。風船よりはマシだね。風船は言うことを聞いてはくれないから」と、マロンは傘の柄に必死でしがみつきながら言いました。「そら。今度は右に飛んで!」。
その時、マロンは、同じ空を飛ぶ、もう一つのコウモリ傘を見つけました。そのコウモリ傘は、マロンの傘よりも、ずっとたくさんのコウモリをしばっていました。コウモリたちは、隊列を組んで飛び回り、右に左に自由自在に飛び回っています。「あれは、誰?」と、マロンはキャサリンに聞きました。キャサリンは、マロンの視線の先を見つめ「ああ、あれは、有名なリンドバーグさんよ。誰かが飛んでいると、必ずどこからともなく現れるの…。きっと、寂しがり屋さんなのよね?」。「あれが、リンドバーグさんなのか?僕、初対面」と、マロンは言いました。「リンドバーグさん!初めまして!」と、マロンが叫びました。
リンドバーグはコウモリ傘を巧みに操って近づいて、「やあ、君のことは、知っているよ。『空飛ぶコーギー』のマロンだね?」と、言いました。「リンドバーグさんは、僕のことを知っているの?」と、マロンが嬉しそうに言いました。「もちろん。風も雲も虹も雨も、みんな君のことは知っているさ。鳥も虫も木の葉も、もちろん、この私だって、空を飛んでいる者だったら、君の名前を知らない者はいないよ」と、リンドバーグは言いました。「でも、このコウモリたちは、僕の言うことを聞いてくれなくて…」「それは、コウモリたちが眠っているからさ。眠っているコウモリは、勝手な性格だからね」「リンドバーグさんは、そんなにたくさんのコウモリを操ることができるんだから、すごいよね」と、マロンが言いました。「パリまで一緒に飛んだ『スピリット・オブ・セントルイス』には、もっとたくさんのコウモリを使ったんだよ」と、リンドバーグは言いました。
「あれは、雨上がりの朝だったな。ルーズベルト空港を、わずかばかりのサンドイッチと水筒を持って離陸したんだ。夜になると、北極星を左に見ながら、東に向かってコウモリを飛ばせたんだよ。2日過ぎからは、眠くて、眠くて…。ひたすら、朝になれば朝日に向かって飛んだんだ。大西洋は広くてね。どこまで飛んでも海だったな。途中で漁船にも会ったんだけど、私がリンドバーグだなんて、誰も知らなかったし…。たった一人でアイルランドの空を飛び、英仏海峡を渡り、エッフェル塔が見えた時の気持ちが、君に分かるかい?」と、リンドバーグは話し続けました。「『翼よ!あれが…』って、コウモリの翼だったんですか?」と、マロンは聞きました。「そうさ。コウモリたちだよ。高い空は寒かったし、コウモリたちも寝ずに飛んでくれたんだ。だから、思わず叫んでしまったんだね」。
「マロン。寂しがり屋のリンドバーグさんは、未だに空を飛んでいるのよ」と、キャサリンが言いました。「永遠の友だちを求めてね」。「そうだったんだ」と、マロンは言いました。マロンのコウモリたちも、いつの間にか目を覚ましたらしく、マロンの操る方向にヒラヒラと飛び始めました。「マロン。僕にとって、コウモリはステキな友だちなんだ」と、リンドバーグが言いました。「僕は、空を飛ぶしか能がない男さ。もしもコウモリがいなければ、寂しくて寂しくて、死んでしまうかも知れない」。「友だちか?」と、マロンはキャンディーやポテトのことを思い出していました。「リンドバーグさん。また、会いましょう!キャサリンさんもバイバイ!」と、マロンはコウモリ傘を操って、みんなのいる街に向かいました。
マロンの街の灯りが点り始めていました。「みんな元気だったかな?」と、マロンは言いました。「ねえ、コウモリさん。見て!あれがね。僕や僕の友だちが住んでる街の灯だよ」。夕焼けの空に、キャサリンの箒とリンドバーグの空飛ぶコウモリ傘が、いつまでも仲良く浮かんでいました。
「マロン。馬車みたいなものよ。犬ぞりみたいと言えば、もっと分かりやすいかしら?」と、箒にまたがった魔女のキャサリンが言いました。「それぞれのコウモリの癖を覚えて言い聞かせないとね」。「うん。風船よりはマシだね。風船は言うことを聞いてはくれないから」と、マロンは傘の柄に必死でしがみつきながら言いました。「そら。今度は右に飛んで!」。
その時、マロンは、同じ空を飛ぶ、もう一つのコウモリ傘を見つけました。そのコウモリ傘は、マロンの傘よりも、ずっとたくさんのコウモリをしばっていました。コウモリたちは、隊列を組んで飛び回り、右に左に自由自在に飛び回っています。「あれは、誰?」と、マロンはキャサリンに聞きました。キャサリンは、マロンの視線の先を見つめ「ああ、あれは、有名なリンドバーグさんよ。誰かが飛んでいると、必ずどこからともなく現れるの…。きっと、寂しがり屋さんなのよね?」。「あれが、リンドバーグさんなのか?僕、初対面」と、マロンは言いました。「リンドバーグさん!初めまして!」と、マロンが叫びました。
リンドバーグはコウモリ傘を巧みに操って近づいて、「やあ、君のことは、知っているよ。『空飛ぶコーギー』のマロンだね?」と、言いました。「リンドバーグさんは、僕のことを知っているの?」と、マロンが嬉しそうに言いました。「もちろん。風も雲も虹も雨も、みんな君のことは知っているさ。鳥も虫も木の葉も、もちろん、この私だって、空を飛んでいる者だったら、君の名前を知らない者はいないよ」と、リンドバーグは言いました。「でも、このコウモリたちは、僕の言うことを聞いてくれなくて…」「それは、コウモリたちが眠っているからさ。眠っているコウモリは、勝手な性格だからね」「リンドバーグさんは、そんなにたくさんのコウモリを操ることができるんだから、すごいよね」と、マロンが言いました。「パリまで一緒に飛んだ『スピリット・オブ・セントルイス』には、もっとたくさんのコウモリを使ったんだよ」と、リンドバーグは言いました。
「あれは、雨上がりの朝だったな。ルーズベルト空港を、わずかばかりのサンドイッチと水筒を持って離陸したんだ。夜になると、北極星を左に見ながら、東に向かってコウモリを飛ばせたんだよ。2日過ぎからは、眠くて、眠くて…。ひたすら、朝になれば朝日に向かって飛んだんだ。大西洋は広くてね。どこまで飛んでも海だったな。途中で漁船にも会ったんだけど、私がリンドバーグだなんて、誰も知らなかったし…。たった一人でアイルランドの空を飛び、英仏海峡を渡り、エッフェル塔が見えた時の気持ちが、君に分かるかい?」と、リンドバーグは話し続けました。「『翼よ!あれが…』って、コウモリの翼だったんですか?」と、マロンは聞きました。「そうさ。コウモリたちだよ。高い空は寒かったし、コウモリたちも寝ずに飛んでくれたんだ。だから、思わず叫んでしまったんだね」。
「マロン。寂しがり屋のリンドバーグさんは、未だに空を飛んでいるのよ」と、キャサリンが言いました。「永遠の友だちを求めてね」。「そうだったんだ」と、マロンは言いました。マロンのコウモリたちも、いつの間にか目を覚ましたらしく、マロンの操る方向にヒラヒラと飛び始めました。「マロン。僕にとって、コウモリはステキな友だちなんだ」と、リンドバーグが言いました。「僕は、空を飛ぶしか能がない男さ。もしもコウモリがいなければ、寂しくて寂しくて、死んでしまうかも知れない」。「友だちか?」と、マロンはキャンディーやポテトのことを思い出していました。「リンドバーグさん。また、会いましょう!キャサリンさんもバイバイ!」と、マロンはコウモリ傘を操って、みんなのいる街に向かいました。
マロンの街の灯りが点り始めていました。「みんな元気だったかな?」と、マロンは言いました。「ねえ、コウモリさん。見て!あれがね。僕や僕の友だちが住んでる街の灯だよ」。夕焼けの空に、キャサリンの箒とリンドバーグの空飛ぶコウモリ傘が、いつまでも仲良く浮かんでいました。