2021年06月23日
僕の地図
今日もコーギーのマロンは、網を担いで小川の辺りをウロウロ。「えーと…?」と、紙切れを広げて首をひねっていました。「ここが、ザリガニ池で、ここからメダカ川。あそこがコブナ淵で、その先がトンボ沼」と、紙切れをクルクル回しながら、つぶやいています。「あっちに行くと、バッタの飛行場があって、えーと…、その先が田んぼに通じている。フンフン」。ポメラニアンのポテトがやって来ました。「マロン。その紙切れは何?」。「これは、僕の地図」と、マロンは答えました。「見せて、見せて」と、ポテトがのぞき込みましたが、何だかさっぱり分からないクチャクチャが書いてありました。
「これが、地図?」と、ポテトが聞きました。「どこが、どこだか分からないじゃん」。「何言ってるの。ここがザリガニ池でしょう。それで、これがメダカ川…。ちゃんと、分かるじゃん」と、マロンが口を尖らせました。「どっちが北なの?」と、ポテトが聞きました。「あのね。犬には北も南もないの。顔が向いたほうが前で、尻尾の側が後。まあ、僕には、尻尾はないけど…」と、マロンが言いました。「ふーん。そんなものなの。よく分からないけど」。
パジャマを着た魔女のキャサリンが飛んで来ました。「まあ、マロンとポテト。ここにいたの?」と、キャサリンも紙切れをあきました。「キャサリンさん。それって、何?」と、ポテトが聞きました。「ああ、これは地図よ。ここが、水晶池でしょう。そして、そっちがトカゲ原で、ほうき沼というわけよね」と、キャサリンがつぶやきました。なるほど、キャサリンの地図には、水色で塗られた池らしい場所や、そこから流れ出す小川、草の茂る原っぱなどが、ポテトにも分かるように描かれていました。「キャサリンさんの地図と、マロンのクチャクチャ地図って、同じ場所なの?」と、ポテトが言いました。「ポテチ。僕は犬だし、キャサリンさんは魔女だよ。同じ地図の訳がないじゃん。ポテチの地図はないの?」と、マロンが言いました。「僕の地図?」と、ポテチが聞きました。「当り前じゃん。地図って、誰でもみんな違っているはず。自分の地図がない方がおかしいよ。ねっ、キャサリンさん?」と、マロンが言いました。「それは、マロンの言うとおりだわ。自分だけの地図は自分だけの夢と同じくらい必要なものね」と、キャサリンが言いました。「僕だけの地図?」と、ポテトがつぶやきました。
次の日の公園で、マロンは紙切れを手にしたポテトに会いました。「マロン。見て!僕も、僕だけの地図を作ったよ」。ポテトの地図も、クチャクチャに書かれていました。でも、紙の右の下に、ポテトの足形が押してあり、多分、その横のクチャクチャは『僕の地図』と書いてあるつもりでしょう。「ほら、ハトの広場でしょう。四つ葉のベンチがここにあって、モモちゃんのトイレがここで、天使の噴水がこれ」と、ポテトが説明しました。「セミの枝とかカブトの木とかがないじゃん」と、マロンが自分の地図を広げました。「僕の地図は、遊びの要素がギッシリと詰まってるんだ」。
「マロン、ポテチ。私の地図を見て!」と、トイ・プードルのキャンディーが寄って来ました。「ここが、ダリアの小道で、こっちがヒマワリ畑。スイレンの池があって、これがマロンの橋」と、キャンディーが指差しました。「何?そのマロンの橋って」と、マロンが聞きました。「あら、忘れたの?前に、マロンがここから池に落ちたじゃない。マロンたら泳げないから、大騒ぎになって…」。「そんな名前、地図に書かないでよ」と、マロンが言いました。「だって、私だけの地図だから、これでいいのよ」と、キャンディーが言いました。「ポテチ。何してるの?」と、マロンがポテトを見ました。ポテトは自分の地図に何かを描き足していました。「マロン橋を描いてるんだ」と、ポテトが答えました。「そんなことしなくたって、いいよ。ガウガウ!」と、マロンがポテトの邪魔をしました。「ダメ!誰だって、自分だけの地図が大切なんだから。自分だけの夢と同じくらいにね」と、ポテチがキャサリンが言ったことを思い出して言いました。「うん。確かに…」。
夏の太陽が3匹の地図を、まぶしいほどに照らしていました。マロンも地図を広げて、何か描き足していました。「こっちが、記憶の森で、こっちが時間のせせらぎ…。ここが、宝の在りか。これって、僕だけの地図だからね」。
「これが、地図?」と、ポテトが聞きました。「どこが、どこだか分からないじゃん」。「何言ってるの。ここがザリガニ池でしょう。それで、これがメダカ川…。ちゃんと、分かるじゃん」と、マロンが口を尖らせました。「どっちが北なの?」と、ポテトが聞きました。「あのね。犬には北も南もないの。顔が向いたほうが前で、尻尾の側が後。まあ、僕には、尻尾はないけど…」と、マロンが言いました。「ふーん。そんなものなの。よく分からないけど」。
パジャマを着た魔女のキャサリンが飛んで来ました。「まあ、マロンとポテト。ここにいたの?」と、キャサリンも紙切れをあきました。「キャサリンさん。それって、何?」と、ポテトが聞きました。「ああ、これは地図よ。ここが、水晶池でしょう。そして、そっちがトカゲ原で、ほうき沼というわけよね」と、キャサリンがつぶやきました。なるほど、キャサリンの地図には、水色で塗られた池らしい場所や、そこから流れ出す小川、草の茂る原っぱなどが、ポテトにも分かるように描かれていました。「キャサリンさんの地図と、マロンのクチャクチャ地図って、同じ場所なの?」と、ポテトが言いました。「ポテチ。僕は犬だし、キャサリンさんは魔女だよ。同じ地図の訳がないじゃん。ポテチの地図はないの?」と、マロンが言いました。「僕の地図?」と、ポテチが聞きました。「当り前じゃん。地図って、誰でもみんな違っているはず。自分の地図がない方がおかしいよ。ねっ、キャサリンさん?」と、マロンが言いました。「それは、マロンの言うとおりだわ。自分だけの地図は自分だけの夢と同じくらい必要なものね」と、キャサリンが言いました。「僕だけの地図?」と、ポテトがつぶやきました。
次の日の公園で、マロンは紙切れを手にしたポテトに会いました。「マロン。見て!僕も、僕だけの地図を作ったよ」。ポテトの地図も、クチャクチャに書かれていました。でも、紙の右の下に、ポテトの足形が押してあり、多分、その横のクチャクチャは『僕の地図』と書いてあるつもりでしょう。「ほら、ハトの広場でしょう。四つ葉のベンチがここにあって、モモちゃんのトイレがここで、天使の噴水がこれ」と、ポテトが説明しました。「セミの枝とかカブトの木とかがないじゃん」と、マロンが自分の地図を広げました。「僕の地図は、遊びの要素がギッシリと詰まってるんだ」。
「マロン、ポテチ。私の地図を見て!」と、トイ・プードルのキャンディーが寄って来ました。「ここが、ダリアの小道で、こっちがヒマワリ畑。スイレンの池があって、これがマロンの橋」と、キャンディーが指差しました。「何?そのマロンの橋って」と、マロンが聞きました。「あら、忘れたの?前に、マロンがここから池に落ちたじゃない。マロンたら泳げないから、大騒ぎになって…」。「そんな名前、地図に書かないでよ」と、マロンが言いました。「だって、私だけの地図だから、これでいいのよ」と、キャンディーが言いました。「ポテチ。何してるの?」と、マロンがポテトを見ました。ポテトは自分の地図に何かを描き足していました。「マロン橋を描いてるんだ」と、ポテトが答えました。「そんなことしなくたって、いいよ。ガウガウ!」と、マロンがポテトの邪魔をしました。「ダメ!誰だって、自分だけの地図が大切なんだから。自分だけの夢と同じくらいにね」と、ポテチがキャサリンが言ったことを思い出して言いました。「うん。確かに…」。
夏の太陽が3匹の地図を、まぶしいほどに照らしていました。マロンも地図を広げて、何か描き足していました。「こっちが、記憶の森で、こっちが時間のせせらぎ…。ここが、宝の在りか。これって、僕だけの地図だからね」。