森の童話館「空飛ぶコーギー」

　突然の夕立に、「空飛ぶコーギー」のマロンはずぶ濡れでした。飛んでいる最中に降り始めた雨を避けることができず、誰も知らない森の奥の奥にある、魔女のキャサリンの小屋に逃げ込みました。「わあ、ずぶ濡れちゃった」と、マロンはブルブルして、水気を切りました。頭をブルブル、体をブルブル、お尻をブルブル。マロンのブルブルで弾き飛ばされた水滴で、床はずぶ濡れになってしまいました。

　しばらくして、最後のニホンオオカミの花丸が飛び込んできました。「もう、大変。えーと、びしょ濡れになっちゃった」と、ブルブルしました。頭をブルブル、体をブルブル、お尻をブルブルさせて、部屋の中はびしょ濡れです。「もう。花丸、水を飛ばさないで」と、マロンが花丸をにらみました。

　キャサリンは、ぐしょ濡れのパジャマを着て箒にまたがったまま、飛び込んできました。「マロンたちの街に行っていたら、急に降り出しちゃって、もう、ぐしょ濡れよ」と、ブルブルを始めました。頭をブルブル、体をブルブル、お尻をブルブルさせて、もう、部屋中の家具もベッドもぐしょ濡れです。「キャサリンさん。何もかも、ずぶ濡れだよ」と、マロンが言いました。

　「えっ？ずぶ濡れ？」と、キャサリンが言いました。「これは、ぐしょ濡れでしょう？」。「えっ？ぐしょ濡れ？」と、花丸が言いました。「これは、びしょ濡れだよ？」。「違うよ。ずぶ濡れ！」と、マロンが言いながら、もう一度ブルブルしました。「違う。びしょ濡れ！」と、花丸もブルブル「ぐしょ濡れです！」と、キャサリンも負けずにブルブル。みんなそろって、頭をブルブル、体をブルブル、お尻をブルブルさせて、小屋の中は、何もかもすっかり水浸しです。

　その時、突然、キャサリンの小屋がブルブルをし始めました。「わあ、何が起きたの？」と、マロンは床にへばりつきました。花丸は押入れに逃げ込み、キャサリンはベッドにしがみつきました。キャサリンの小屋は、屋根をブルブル、窓をブルブル、扉も床もブルブルブルブル。あっという間に部屋中の水が表に飛び出しました。

　小屋の外は、いつの間にか雨が上がっていました。「夕立、あがったね」と、マロンが言いました。「本当だわ。きれいな虹が架かってる」と、キャサリンも外をながめて言いました。「あんなに、びしょ濡れだったのに。もう乾いちゃった」と、花丸が言いました。「ずぶ濡れ！」とマロン。「ぐしょ濡れ！」はキャサリン。「わっ！まただ」。キャサリンの小屋が、最後にもう一度ブルブルっとみんなを揺すりました。