森の童話館「空飛ぶコーギー」

　「ねえ、ポテト。お腹がすかない？朝から何も食べていないんだ」と、食いしん坊の「空飛ぶコーギー」マロンが聞きました。「うん。すいた。ドッグフードが食べたいなあ」と、ポメラニアンのポテトが答えました。「僕は、ダブルマックとかケンタッキーとかが食べたい」と、マロンがよだれを垂らさんばかりに言いました。「マロン。そんなものばかり食べていると、また太るよ。これ以上太ったら、また空を飛べなくなっちゃうよ」と、ポテトが呆れて言いました。「だけど、１日２食はきついよ。僕には、３食とおやつの生活がうらやましいな」。

　「ああ、お腹がすいた」と、公園のハトが言いました。「雨の季節は木の実とか落ちてないから、餌を探すのが、大変なんだよな。ああ、お腹がすいた」。「見つけた餌を、貯めておけばいいのに？」と、ポテトが言いました。僕なんか、こんな時のために、毎日ドッグフードを少しずつ貯めているんだよ」。「ええ、ポテチ。そんなことしてたの？」と、マロンが言いました。「そんな堅実派って、犬には珍しいよね」。

　「ああ、お腹がすいた」と、痩せっぽちのブタが言いました。「僕は、３日も食べてないんだ。だから、もう目が回りそう」。「ええ？飼い主がご飯をくれないの？ポテチ。ドッグフードをあげたら？」と、マロンが言いました。「違うよ。僕たちが太ったら、それは肉にされるってことなんだ。だから、太らないように太らないように、こっそりご飯を残しているんだよ」と、痩せっぽちのブタが言いました。「聞いた？マロンはいいよね。いくら太っても、和くんたちに食べられる心配はないし…」と、ポテトが言いました。「ガウ！」と、吠えてみましたが、マロンはちょっぴり複雑な気持ちになりました。

　「ああ、お腹がすいた」と、パジャマを着た魔女のキャサリンが言いました。「キャサリンさんもダイエット？」と、マロンが聞きました。「違うわよ。雨の季節は、森に薬草摘みに行けなくって、もう４日も食べてないのよ」と、キャサリンがため息をつきました。「ポテチ。ドッグフードをあげたら？」と、マロンが言いました。「あら、この際だから、ドッグフードをいただこうかしら？」と、キャサリンが言いました。「何の薬草が入っているのかしら？クンクン」。「薬草？そんなもの入ってないよ。でも、僕は好きだよ」と、ポテトが言いました。キャサリンは匂いを嗅いでみました。「わっ、これは食べられないわ。魔女の食卓に、ドッグフードは不向きね。人間って、こんなものを食べているのかしら？」「まさか。人間は食べないよ」と、ポテトは言いました。「キャサリンさんなら、食べるかなって思ったんだけど…」。

　「ああ、お腹がすいた。ペコペコだ」と、保育園のお迎えバスが言いました。「僕は、もう５日間、食べていないんだ」。「まさか、お迎えバスは、ドッグフードは食べないよね？」と、マロンが言いました。マロンは、給油口を開けて、ポテトのドッグフードを少しだけ入れてみました。「うん。これは美味しい。しかもパワーが出そうだ」と、バスが言いました。「ええ？まさか」と、ポテトが言いました。「ううん。確かに僕が飲んでいるガソリンなんかより、はるかに美味しいよ。よし、元気が出たぞ。子どもたちを迎えに行こう」と、白い煙を吐きながら走って行きました。「ポテト。ありがとう」。

　「ねえ。ポテチ。僕にも少しだけ分けてくれない？」と、マロンがドッグフードをねだりました。「マロンは、マックとかでなくちゃダメだって言ってたじゃん」と、ポテトが言いました。「ポテチ。自慢じゃあないけど、僕はグルメじゃあなくて、食いしん坊なんだよ。とりあえず、お腹に入れば何でも文句は言わないから。ねえ、お願い。ドッグフードを分けて。僕、お腹がすいた！」。