2021年07月09日
占いの館
「今日のあなたの運勢はスーパーミラクルスペシャルな大吉。すごい!すご過ぎます!何て強い運勢なのでしょう」と、黒いとんがり頭巾から目だけを出した占い師が言いました。コーギーのマロンが訪ねた『占いの館』の占い師の話です。「こんなにすごい運勢はまず出ません。アンビリバボーです!」と、水晶の玉に両手をかざして、静かにうなずきながら続けました。「どんな夢でも叶います。大金がガッポリ入ってくるかも。でも、このことは誰にも話してはダメ!」。「ふーん。何かいいことがありそうだ。お金より食べ物の方がいいけどな」と、マロンは館を後にしました。
「ねえ、ポテチ。今日の僕って、最高の運勢なんだって」と、ポメラニアンのポテチに話しました。「スーパーミラクル…」。「…スペシャル大吉でしょう?」と、ポテトが言いました。「何で知ってるの?」「僕だって、そう言われたもん」。「そ、そうなの?」と、マロンが言いました。「あれ?マロンって、占いを信じてるの?」「いや、別に信じてなんかいないけど、悪い気はしないよね。今朝の『めざましテレビ』では、『何をやってもうまくいかない一日です』って言われたけど…」「キャンディーも同じことを言われたってさ。あそこの『占いの館』でね。誰にも話すなって」。
マロンとポテトは『占いの館』に戻ってみました。館からは、「スーパーミラクル…」「…スペシャル大吉」と、ニコニコ笑顔が次々に出てきます。「ねっ。みんな、同じことを言われたんだよ」と、ポテトがマロンの顔を見ました。マロンはちょっぴりガッカリした表情でしたが「占いとか運勢とか、信じる犬って、いないよね」と言いました。「大金がガッポリとかね…」。
やがて『占いの館』が、一番星が光り始めて、そろそろ店じまいの時間になりました。マロンとポテトが見ているとも知らずに、黒頭巾の占い師が出てきました。「ああ、今日も迷える犬たちがたくさん来たな」と、大きな伸びをしました。「みんな気分良く帰ったかな?」と、黒頭巾を脱ごうとしていました。マロンとポテトは、電柱の陰に隠れてのぞいていました。「ねえ、誰だろう?」。黒頭巾が外されました。ところが、黒頭巾の下には、何も顔がありません。「えっ、顔なし?」と、ポテトが小さな声で言いました。「そんなバカな!」。
占い師が黒のガウンを脱ごうとしていました。マロンとポテトは、ゴクリと唾を飲み込みました。もしかしたら、ガウンの下も何にもなしの透明人間かも知れません。ポテトの足が小刻みに震えていました。マロンの喉もすっかり渇いていました。見えない手で一つずつボタンが外されました。「マロン。いよいよだよ」「うん。誰が入っているんだろう?」。
すべてのボタンが外されて、ガウンがハラリと地面に落ちました。「あれ?黒猫?」。ガウンの中にいたのは、いつもの三毛猫でした。「三毛猫じゃん!」。猫は、マロンたちの声にビクッとしたようでした。急いで黒頭巾とガウンを丸めると、小脇に抱えて逃げようとしました。「待って!」と、マロンが呼び止めました。「別に僕は悪いことをしてるわけじゃあニャイよ」と、猫が言いました。
「ねえ、どうして占い師に化けていたの?」と、ポテトが聞きました。「化けていたわけじゃあない」と、猫が答えました。「もともと猫は霊感が強い生き物なんだ。僕にも、時々紫のオーラとかが見えたりするんだニャ。それで、迷える犬たちの羅針盤になれればいいな、と思って始めたんだ」。「でも、みんなに同じことを言ってるのは、なぜ?」と、マロンが聞きました。「それは、自信をなくしている犬に、自信を取り戻してもらうには、相手が望んでいることを言ってあげるのが一番だからだよ。犬って、みんな困ったような顔をしているから」と、三毛猫が言いました。「うーん。それは、ちょっと違うな。犬は猫ほど気楽じゃあないってこと。決められた時間に食事をして、決められた時間におうちに帰る。夜遊びしている犬なんか、見たことないでしょう?それって、結構ストレスなんだよね」と、マロンが言いました。「マロン以外の犬は、早起きだし、太り過ぎないように食事にも気を使っているし、拾い食いだってしないし…」と、ポテトが言いました。
「でも、元気が出たでしょう?」と、三毛猫が聞きました。「うん。それは言える!」と、2匹は答えました。「とにかく、今日のマロンの運勢は、スーパーミラクルスペシャル大吉ニャンだから」と、三毛猫が言いました。「でも、もう晩ご飯の時間だし、今さら『今日の運勢』とか言われてもねえ…」。
マロンとポテトは少しいい気分で、三毛猫の占い師と別れました。「確かに悪い気はしないよね」「うん。悪い気はしない。明日も、占ってもらおう!」「そうしよう!」「おっ、何か落ちてる」「ダメだよ。拾って食べちゃあ!」「サヨナラ!」と別れましたが、空にはもう二番星が光っていました。
「ねえ、ポテチ。今日の僕って、最高の運勢なんだって」と、ポメラニアンのポテチに話しました。「スーパーミラクル…」。「…スペシャル大吉でしょう?」と、ポテトが言いました。「何で知ってるの?」「僕だって、そう言われたもん」。「そ、そうなの?」と、マロンが言いました。「あれ?マロンって、占いを信じてるの?」「いや、別に信じてなんかいないけど、悪い気はしないよね。今朝の『めざましテレビ』では、『何をやってもうまくいかない一日です』って言われたけど…」「キャンディーも同じことを言われたってさ。あそこの『占いの館』でね。誰にも話すなって」。
マロンとポテトは『占いの館』に戻ってみました。館からは、「スーパーミラクル…」「…スペシャル大吉」と、ニコニコ笑顔が次々に出てきます。「ねっ。みんな、同じことを言われたんだよ」と、ポテトがマロンの顔を見ました。マロンはちょっぴりガッカリした表情でしたが「占いとか運勢とか、信じる犬って、いないよね」と言いました。「大金がガッポリとかね…」。
やがて『占いの館』が、一番星が光り始めて、そろそろ店じまいの時間になりました。マロンとポテトが見ているとも知らずに、黒頭巾の占い師が出てきました。「ああ、今日も迷える犬たちがたくさん来たな」と、大きな伸びをしました。「みんな気分良く帰ったかな?」と、黒頭巾を脱ごうとしていました。マロンとポテトは、電柱の陰に隠れてのぞいていました。「ねえ、誰だろう?」。黒頭巾が外されました。ところが、黒頭巾の下には、何も顔がありません。「えっ、顔なし?」と、ポテトが小さな声で言いました。「そんなバカな!」。
占い師が黒のガウンを脱ごうとしていました。マロンとポテトは、ゴクリと唾を飲み込みました。もしかしたら、ガウンの下も何にもなしの透明人間かも知れません。ポテトの足が小刻みに震えていました。マロンの喉もすっかり渇いていました。見えない手で一つずつボタンが外されました。「マロン。いよいよだよ」「うん。誰が入っているんだろう?」。
すべてのボタンが外されて、ガウンがハラリと地面に落ちました。「あれ?黒猫?」。ガウンの中にいたのは、いつもの三毛猫でした。「三毛猫じゃん!」。猫は、マロンたちの声にビクッとしたようでした。急いで黒頭巾とガウンを丸めると、小脇に抱えて逃げようとしました。「待って!」と、マロンが呼び止めました。「別に僕は悪いことをしてるわけじゃあニャイよ」と、猫が言いました。
「ねえ、どうして占い師に化けていたの?」と、ポテトが聞きました。「化けていたわけじゃあない」と、猫が答えました。「もともと猫は霊感が強い生き物なんだ。僕にも、時々紫のオーラとかが見えたりするんだニャ。それで、迷える犬たちの羅針盤になれればいいな、と思って始めたんだ」。「でも、みんなに同じことを言ってるのは、なぜ?」と、マロンが聞きました。「それは、自信をなくしている犬に、自信を取り戻してもらうには、相手が望んでいることを言ってあげるのが一番だからだよ。犬って、みんな困ったような顔をしているから」と、三毛猫が言いました。「うーん。それは、ちょっと違うな。犬は猫ほど気楽じゃあないってこと。決められた時間に食事をして、決められた時間におうちに帰る。夜遊びしている犬なんか、見たことないでしょう?それって、結構ストレスなんだよね」と、マロンが言いました。「マロン以外の犬は、早起きだし、太り過ぎないように食事にも気を使っているし、拾い食いだってしないし…」と、ポテトが言いました。
「でも、元気が出たでしょう?」と、三毛猫が聞きました。「うん。それは言える!」と、2匹は答えました。「とにかく、今日のマロンの運勢は、スーパーミラクルスペシャル大吉ニャンだから」と、三毛猫が言いました。「でも、もう晩ご飯の時間だし、今さら『今日の運勢』とか言われてもねえ…」。
マロンとポテトは少しいい気分で、三毛猫の占い師と別れました。「確かに悪い気はしないよね」「うん。悪い気はしない。明日も、占ってもらおう!」「そうしよう!」「おっ、何か落ちてる」「ダメだよ。拾って食べちゃあ!」「サヨナラ!」と別れましたが、空にはもう二番星が光っていました。
Posted by AKG(秋葉観光ガイド)の斉藤さん at 04:21│Comments(0)
│空飛ぶコーギー