2021年07月26日

夏の終わり

 「夏の終わりって、何だか寂しいね」と、コーギーのマロンがつぶやきました。「もうすぐ夏とサヨナラだもんね」と、ポメラニアンのポテトも言いました。「夏の高校野球、甲子園大会も終わっちゃったし…」「早稲田実業の優勝でね」。マロンとポテトは、なぜか浜辺に来ていました。なぜって?「だって、夏の終わりには、青い海と白い波が似合いだもん」。

 「まだまだ暑い日は続くよ」と、1年生のリナちゃんが言いました。「でも、花火大会も終わっちゃうし…」「福田の花火大会でね」。砂浜には、ヤドカリたちがいそいそと動き回っていました。なぜって?「だって、新しいうちを探さなくちゃあいけないもん」。白い波が青い波を追い越して打ち寄せました。なぜって?「だって、遠くの海に戻らなくっちゃあいけないもん」。

 「リナちゃん。いつものクレヨン持ってきた?」と、マロンが聞きました。「もちろん」と、リナちゃんがいつもの空色クレヨンを箱から出しました。「ほらね」。マロンはリナちゃんのクレヨンを借りて、砂浜に絵を描き始めました。「僕の夏はコレ!」と、マロンは空色クレヨンで大きなスイカを描きました。「丸くて、縞々」。「それからコレ!」と、マロンは空色クレヨンで大きなトウモロコシを描きました。「甘くて、どっしり」。「来年の夏も、ポテトやリナちゃんと一緒に食べたいね」と、マロンが言いました。

 「僕はね…」と、ポテトも空色クレヨンで描きました。「コレ!」と、ポテトは大きなカブトムシを描きました。「角があって、力もあって。空だって飛べるし、僕がかわいがって育てたんだし…。でも、もう死んじゃった」。「来年の夏も、リナちゃんやマロンに僕のカブトを見せてあげたいな」と、ポテトが言いました。「僕のカブト、卵を産んだんだよ」。

 「私はね…」と、リナちゃんが砂浜に描きました。「コレは何?」。リナちゃんの描いたのは、エゴエゴのグチャグチャのヘロヘロのニョロニョロでした。「リナちゃん。コレは何?」。「形にならない思い出がいっぱい。来年の夏の終わりにも、マロンちゃんやポテトちゃんと一緒に、この浜辺に来ようね。約束だよ」と、リナちゃんが言いました。

 リナちゃんが砂浜の書いたのは絵ではなくて、「サヨナラ」のカタカナでした。「もうすぐ、今年の夏に、サヨナラだね」。あわてん坊の白い波と青い波とが、マロンやポテトやリナちゃんが描いた夏の思い出を消してしまいました。なぜって?「僕たち、遠くの海に戻らなくっちゃ」。


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Posted by AKG(秋葉観光ガイド)の斉藤さん at 05:33│Comments(0)空飛ぶコーギー
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