2021年07月03日

あっぷっぷ

 「空飛ぶコーギー」のマロンが虫捕り網を担いで歩く様子は、今日も見られました。「マロン。今日は何を捕るの?」と、ポメラニアンのポテトもついてきました。「今日はね。トンボ捕り」と、マロンが網を振り回してみせました。「捕れるかなあ?」と、ポテトは少し不安そう。「だって、僕たちの周りにいるトンボくんに、今の話、聞かれちゃったもん」。

 シオカラトンボもムギワラトンボも、マロンたちに先回りして、原っぱに一目散。「ねえ、マロンたちが網を担いで来るよ」と、仲間のトンボに声をかけました。「犬に捕まるトンボなんていないよ」と、トンボは言いました。「高い所を飛んで、見ていようか?」と、別のトンボが言いました。「来た、来た」。2匹は、抜き足差し足で原っぱに近づきました。

 「トンボはね…」と、マロンが小さな声で言いました。「姿勢を低くしていないと、すぐに見つかっちゃうからね」。「うん。分かった。這い這いだね」と、ポテトも小さな声で答えました。「でも、トンボはあんなに高いところを飛んでる。あれじゃあ、空でも飛ばないと、捕まえられないよ」。「もう、こうしてやる!」と、急にマロンが網を振り回しました。「ちょっと、マロンと遊んでくるかな」と、トンボが1匹降りてきました。トンボはマロンの顔の周りをスイスイと飛んで、虫捕り網にとまりました。マロンは「やった!」と網を振りましたが、トンボは軽く飛び上がり、またマロンの顔の周りを飛びました。マロンが網を休めると、トンボも休んで網にとまります。飛んだり休んだり、休んだり飛んだり、マロンをからかうみたいに飛び回りました。

 「マロン。何だかからかわれているみたいだよ」と、ポテトが言いました。「うん。からかわれているみたい」と、マロンは原っぱの真ん中で一休み。「もう、疲れちゃった」。トンボは、マロンの鼻の頭で一休み。マロンとトンボの目と目が合いました。

 トンボの目玉はペンキ塗りたてみたいなエメラルド色。顔より大きな目玉が2つ、ギョロリとマロンをにらんでいました。マロンも目玉を寄せて、負けずににらみました。マロンの目玉には、青空と鼻にとまったトンボの顔が映っていました。トンボの目玉にはマロンの顔が3000も映っていました。トンボが目玉をクルクルと回しました。トンボの目玉の中の3000匹のマロンの顔が、クルクルと回りました。「僕だってできるよ」と、マロンも負けずに目玉クルクルをしてみせました。「マロン。負けるな!」と、ポテトが声をかけました。「負けるもんか!」。

 トンボがほっぺたをプクっと膨らませました。マロンも負けずにほっぺたを膨らませました。「何してるの?」と、夏の風が近づいてぎました。「にらめっこ」と、ポテトが言いました。「どっちも、負けるな!」と、真夏の風は通り過ぎて行きました。高い空を飛んでいたトンボの仲間も、みんな近くに集まってきました。マロンの鼻にとまったトンボに「負けるな!」「頑張れ!」と、声援を送りました。

 トンボたちの羽音が、マロンの耳で扇風機みたいに響きました。羽が起こした風が集まり、マロンの鼻をくすぐりました。「フガフガ…」と、マロンが言いました。「マロン。どうしたの?」。「鼻が、鼻がくすぐったくて、フガフガ…」。「ハ、ハ、ハックショーン!」と、マロンが天まで届くような大きなクシャミを一つ。マロンの鼻にとまったトンボは、クルクル回ってどこまでも高く吹き飛ばされて行きました。「ワッハッハ!」と、トンボたちの笑い声が、マロンとポテトに聞こえました。「トンボの負け!」と、あっちのトンボが言いました。「マロンの勝ち!」と、こっちのトンボも言いました。「やったー!マロンの勝ちだって」と、ポテトがはしゃぎました。「マロン。一緒に飛ばないの?」と、そっちのトンボが誘いました。「よし!僕も飛ぶよ。あっぷっぷ!」と、マロンが夏空にトンボを追って、飛び上がりました。


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Posted by AKG(秋葉観光ガイド)の斉藤さん at 04:27│Comments(0)空飛ぶコーギー
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