2021年05月03日
草むらのサッカー場
「空飛ぶコーギー」のマロンとポメラニアンのポテトが、草むらでかくれんぼをしていた時のことです。「ねえ、マロン。ここは何だろう?」と、ポテトが呼びました。「そんなこと言って、僕が出て行くと捕まえる気だな?」と、マロンが答えました。「違うよ。草の中に、広場を見つけたんだ」と、ポテトが言いました。「広場?」「うん。とても広いところ」。2匹がすっぽりと体が隠れる程に高く伸びた夏草の中には、広くて平らなサッカーコートが広がっていました。「何だろう?」「どうして、今まで気づかなかったんだろう?」と、マロンとポテトは顔を見合わせました。
「マロン。遊ぼう」と、ポテトが言いました。「よーし。走るぞ!」と、マロンは短い足をバタバタさせて、駆け出しました。「待って!」と、ポテトも右に左に駆け回りました。その時、広場の奥から、サッカーボールをドリブルしながら、すごいスピードで近づいてくる黄色い影が見えました。「誰?」「誰だろう?」。黄色い影は、サンバのリズム。腰を振り、ステップを踏み、夏の日差しの下で美しく輝いて見えました。「誰?」「誰だろう?」。
「ロナウジーニョだ!」と、マロンが叫びました。黄色い影は、カナリア・イエローの幻でした。栄光の10番のユニフォームの腕を肩まで捲り上げ、あのロナウジーニョが素足のままで擦り切れたようなボロボロのサッカーボールを蹴っていました。幻のロナウジーニョは笑っていました。ボールを蹴る時間が楽しくて、楽しくて、貧しさを忘れるために、空腹を忘れるために走っていた少年の頃のように、ただただ走っていました。擦り切れたボールは糸で吊られた操り人形のように、サンバのリズムで踊っていました。
幻のロナウジーニョは、真夏の景色を切り裂いて走りました。「マロン。本物のロナウジーニョ?」と、ポテトが聞きました。「うん。本物の幻だね」と、マロンは答えました。ロナウジーニョが近づいてきました。変わらない笑顔でマロンに近づくと、足の裏でボールを止めて、左に抜くと見せかけて、右に抜け、その瞬間、浮かせたボールと一緒にロナウジーニョも消えて見えなくなりました。
あっという間の出来事でした。マロンとポテトはポカンとして立ち尽くしていました。「マロン。僕たち、スゴイものを見ちゃったね」と、ポテトが言いました。「うん。スゴイものを見ちゃった」。「幻だったんだよね?」「多分ね」「ロナウジーニョって、いつまでたってもサッカー少年なんだね」。
マロンとポテトが振り返ると、そこにはもう、さっきのサッカーコートはありませんでした。いつもの夏草の茂る草むらに、夏の日差しが黄色く光っていました。「消えちゃったね?」「幻だったんだ」と、マロンとポテトは話しました。「マロン。あれ、何?」と、ポテトが近づいた足元に、皮の擦り切れたボロボロのサッカーボールが隠れていました。「ロナウジーニョの蹴っていたボールだ」と、マロンが言いました。「さっきのボールだね」と、ポテトが言いました。「もらっちゃう?」。「ダメ。また、ロナウジーニョが現れた時のために、残しておこうよ」と、マロンが言いました。「でも…」と、ポテトが言いました。「1回だけ、蹴らしてもらおう!」「そうしよう、そうしよう」と、2匹は交替でボールを1回ずつ蹴りました。ゴール!
「マロン。遊ぼう」と、ポテトが言いました。「よーし。走るぞ!」と、マロンは短い足をバタバタさせて、駆け出しました。「待って!」と、ポテトも右に左に駆け回りました。その時、広場の奥から、サッカーボールをドリブルしながら、すごいスピードで近づいてくる黄色い影が見えました。「誰?」「誰だろう?」。黄色い影は、サンバのリズム。腰を振り、ステップを踏み、夏の日差しの下で美しく輝いて見えました。「誰?」「誰だろう?」。
「ロナウジーニョだ!」と、マロンが叫びました。黄色い影は、カナリア・イエローの幻でした。栄光の10番のユニフォームの腕を肩まで捲り上げ、あのロナウジーニョが素足のままで擦り切れたようなボロボロのサッカーボールを蹴っていました。幻のロナウジーニョは笑っていました。ボールを蹴る時間が楽しくて、楽しくて、貧しさを忘れるために、空腹を忘れるために走っていた少年の頃のように、ただただ走っていました。擦り切れたボールは糸で吊られた操り人形のように、サンバのリズムで踊っていました。
幻のロナウジーニョは、真夏の景色を切り裂いて走りました。「マロン。本物のロナウジーニョ?」と、ポテトが聞きました。「うん。本物の幻だね」と、マロンは答えました。ロナウジーニョが近づいてきました。変わらない笑顔でマロンに近づくと、足の裏でボールを止めて、左に抜くと見せかけて、右に抜け、その瞬間、浮かせたボールと一緒にロナウジーニョも消えて見えなくなりました。
あっという間の出来事でした。マロンとポテトはポカンとして立ち尽くしていました。「マロン。僕たち、スゴイものを見ちゃったね」と、ポテトが言いました。「うん。スゴイものを見ちゃった」。「幻だったんだよね?」「多分ね」「ロナウジーニョって、いつまでたってもサッカー少年なんだね」。
マロンとポテトが振り返ると、そこにはもう、さっきのサッカーコートはありませんでした。いつもの夏草の茂る草むらに、夏の日差しが黄色く光っていました。「消えちゃったね?」「幻だったんだ」と、マロンとポテトは話しました。「マロン。あれ、何?」と、ポテトが近づいた足元に、皮の擦り切れたボロボロのサッカーボールが隠れていました。「ロナウジーニョの蹴っていたボールだ」と、マロンが言いました。「さっきのボールだね」と、ポテトが言いました。「もらっちゃう?」。「ダメ。また、ロナウジーニョが現れた時のために、残しておこうよ」と、マロンが言いました。「でも…」と、ポテトが言いました。「1回だけ、蹴らしてもらおう!」「そうしよう、そうしよう」と、2匹は交替でボールを1回ずつ蹴りました。ゴール!
Posted by AKG(秋葉観光ガイド)の斉藤さん at 04:33│Comments(0)
│空飛ぶコーギー