2021年02月27日

The Crazy Dogs

 ジャーン、ジャーン♪と、わんぱくビーグルのクッキーが真っ赤なギターを弾いていました。修くんの自動車修理工場の、仕事が終わった後のガレージの片隅です。「わっ、カッコいい」と、ポメラニアンのポテトがのぞきました。「カッコいいって言っても、まだ、何もやってないよ」と、クッキーが言いました。「でも、カッコいいじゃん。それって、エレキ・ギターでしょう?」と、ポテトが言いました。「うん。僕もまだ習い始めたばかりだから、うまく弾けないんだ」と、クッキーがジャーン、ジャーン♪とかき鳴らしました。

 これは、何?ギター?」と、ポテトが聞きました。「ああ、これはベース。誰か弾ける人がいないかな?」と、クッキーが言いました。「ぼ、僕じゃあダメ?」と、ポテトが聞きました。「やったことあるの?」「ううん。楽器はリコーダーだけ。でも、僕もやってみたい」「バンドを組むには、あと、ドラムスがいないかな?」と、言っているところに、「空飛ぶコーギー」のマロンが「ズンズンタ、ドドスカドン、ズンズンタ、ドドスカドン」と、言いながら現れました。「呼んだ?」。

 「た、助けて!」と、トイ・プードルのキャンディーが走ってきました。「どうしたのさ、ベイビー?」と、マロンが聞きました。真っ黒なカラスの一団がキャンディーを追いかけて来ました。体と同じくらいに真っ黒なレイバンのサングラスをかけたリーダーっぽいカラスが「おい、その子を返してもらおうか」と、すごみました。「キャンディー、一体何したの?」と、マロンが聞きました。「あのカラスたちがいけないの。生ゴミの袋に穴を開けて、食べ散らかしていたから、私は注意しただけ」と、キャンディーが訴えました。「そうしたら、いきなりつついて追いかけて来たの」。「この辺のカラスじゃあ、なさそうだぜ」と、クッキーが渋く言いました。リーダーっぽいカラスがサングラスを外して言いました。「さあ、その子をこっちによこしな」。「そいつは、できねえ相談だなあ」と、マロンは、どっかで聞いたことのあるような台詞を言いました。

 「やっちまえ!」と、リーダーっぽいカラスが声をかけました。手下カラスが一斉に飛び掛ってきました。キャン、キャンとポテトが一番弱そうなカラス目がけて飛び掛りました。でも、あっという間につつかれて、キャイン、キャインとあっけなく戻ってきました。「とうとう、本気で俺を怒らしちまったようだな」と、マロンがカッコよく台詞を決めました。マロンが拳に息を吐きかけました。ジャブもフックも届きませんでしたが、ガウガウと殴りかかった勢いだけで、3羽のカラスが逃げました。短い足でのキックも空振りでした。今度はドラムのスティックを握って、「ドドスカドン、ドドスカドン」と攻撃しました。

 リーダーっぽいカラスがナイフのようなものを光らせました。「マロン、危ない!」と、キャンディーが黄色い声で叫びました。マロンはリーダーっぽいカラスの羽を持って1回2回3回廻し、力任せにクッキーに振りました。待ち構えていたクッキーが、手にしたギターでリーダーっぽいカラスを殴りました。ギャイーン!と大きな音が響き、レイバンのサングラスが空に舞い上がりました。「お、覚えてろ!」と、カラスは言って一目散に逃げ出しました。「俺を怒らせると、危ないぜ!」と、マロンが言いました。「ザマーミロ!」と、ポテトが言いました。「マロンって強いのね。ありがとう」と、キャンディーが言いました。「あの、僕は?」とポテトが言いました。クッキーは黙って切れたギターの弦を張り替えていました。ナイフのように光ったのは、缶ジュースのプルタブでした。「空き缶の回収日は来週なんだけどな?」。
The Crazy Dogs


 ギャイーン!と高音のギターのあとを、ブンブンブンとベースが追いかけました。ズンズンタ、ズンズンタとドラムがリズムを刻み、キーボードがメロディーに参加する前に、歓声が湧き上がりました。ライブ会場には、ミクとチョロの兄妹コーギーが来ていました。ボーボとナツの二匹のダックスも来ていました。愛ちゃんやチカちゃんも来ていました。アキラくんと(ユイさんが仕事でこれなかったので)沙織さんは手をつないでいました。修くんの自動車修理工場の99匹のネズミたちも来ていました。北風市長もこっそり来ていました。グラスホッパー知事からは、祝電が届いていました。うめたちあきさんもドンドンと跳び跳ねていました。公園のハトたちも来ていました。あの生ゴミ臭い真っ黒カラスたちも来ていました。

 ギターはクッキーが担当し、ギャイーン、ギャイーン、テケテケテケ♪と演奏しました。ベースはポテト、キーボードにはYAMAHA音楽教室でエレクトーンを習っていた紅一点のキャンディーが入り、短い足で力任せにバスドラを踏むのは、我らがマロンです。お待ちかね、『ザ・クレージー・ドッグズ』の演奏が始まりました。マロンがリーダーっぽいカラスの忘れ物のレイバンのサングラスを放り投げました。キャー!ともう一度歓声が湧いて、マロンが搾り出すように歌い始めました。ワオーン♪


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Posted by AKG(秋葉観光ガイド)の斉藤さん at 04:51│Comments(0)北風市長空飛ぶコーギー
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