2021年01月14日
おかしな宅配便
ピン、ポーン!和くんの家の玄関のチャイムが鳴りました。「はーい」と、和くんのお母さんがドアを開けると、制服を着た宅配便さんが立っていました。「マロン様に、お届け物です」と、宅配便さんが言いました。「まあ、珍しい。マロンに何が届いたのかしら?」と、和くんのお母さんが、マロンの方を振り返りました。大きなダンボールの箱に、見慣れた送り状が貼られ、送り状の宛名の欄には確かに「そらとぶコーギーのマロンさま」と、たどたどしい字が並んでいました。差出人の欄には「チカちゃん」と書いてありました。「マロン。チカちゃんからよ。何が入っているのかしらね?」と、お母さんが言いました。マロンは、期待に小さく首を傾けました。
「マロン、僕が開けてもいい?」と、和くんが言いました。マロンは、やはり小さくうなずきました。「楽しみだね」と言いながら、和くんが紐をほどき、箱のふたに手をかけました。「チカちゃん、何を送ってくれたんだろう」と、マロンはなんだかワクワクしてきました。「さあ、開けるよ」と、和くんが言いました。ふたが少し開きました。「あれ?」と、和くんが首をひねりました。大きな箱の中には、もう一つ箱が入っていました。マロンは、「きっと、食べ物だ。『ミモザ』のチーズ入りパンかも知れない」と、ワクワクしてきました。「さあ、開けるよ」と、和くんが言いました。今度は一気に開きました。「あれ?」。箱の中には、また箱が入っていました。「何でしょう?」と、お母さんが言いました。
「ずいぶんと念入りだね」と、和くんが次の箱を開け始めました。マロンは、「もしかしたら、『ポモドーロ』の完熟トマトかも知れない」と、ドキドキしてきました。「あれ?どうしちゃったの?」と、和くんが言いました。それもそのはず、箱は開けても開けても、新しい箱が出てくるだけです。「どうして?」と、マロンも思いました。「ドッグフードかな?」。
和くんは、四つも五つも箱を開きました。八つも九つも箱を開きました。とうとう、十個目の箱を開く時がきました。十個目の箱は、香りの漂う木の箱でした。「今度こそ」と、和くんが箱を開けました。
箱のふたを開けると同時に「わあーーーぁ!」と、ありったけの大声が、家の中だけでなく、庭にも外の道路にまでも響きました。和くんは驚いて、箱を投げ出しました。マロンもビックリして、後ずさりしました。お母さんは両手で耳をおおいました。大声は、聞き覚えのある、あの明るいチカちゃんの声でした。マロンがソロリソロリと木の箱に近づき、「ドッグフード、ドッグフードはどこかな?」と、箱の中をのぞき込みました。箱の中には、他に何も入っていません。「大声だけで、他には何も入っていないなんて、おかしな宅配便?」と、マロンは思いました。
「ねえ、マロン。マロンの鼻の頭に花が咲いているわよ」と、和くんのお母さんが言いました。「どうしたのかしら?」。マロンは左右の目を寄せて、自分の鼻の頭を見てみました。「本当だ。黄色いパンジーが咲いてる」。「マロン、見てごらん。部屋の中も、花がいっぱい咲いている」と、和くんが言いました。「本当だ。テーブルの上にも窓辺にも、花がいっぱいだ」と、マロンは思いました。玄関のドアを開けて、キャンディーが飛び込んできました。「マロン。今ね、公園の花壇の花が一斉に開いたの。何があったのかしら?」と、キャンディーが言いました。「花壇だけじゃあなくて、池の周りの桜の木も、ピンク色に染まったの」。

「分かった!」と、マロンは言いました。「おかしな宅配便」に閉じ込められたチカちゃんの大声は、春を届けるステキな宅配便だったんです。「キャンディー、公園に行ってみよう」と、マロンは家を飛び出しました。「待って!」と、キャンディーが後を追いました。和くんも、和くんのお母さんも、表に飛び出しました。公園の方から、花の香りが春風に乗ってただよってきました。花の香りと一緒に、「わあーーーぁ!」と、どこからか、チカちゃんの、春を届けるあの大きな声も次々と聞こえてきました。チカちゃんの「おかしな宅配便」は街のみんなに届けられたようです。箱を開いた街のみんなが、続々と街角にあふれました。「えっ?あなたの街には、ですって?」。もう少しお待ちください。宅配便さんは、まだまだ、走り回っているはずです。
「マロン、僕が開けてもいい?」と、和くんが言いました。マロンは、やはり小さくうなずきました。「楽しみだね」と言いながら、和くんが紐をほどき、箱のふたに手をかけました。「チカちゃん、何を送ってくれたんだろう」と、マロンはなんだかワクワクしてきました。「さあ、開けるよ」と、和くんが言いました。ふたが少し開きました。「あれ?」と、和くんが首をひねりました。大きな箱の中には、もう一つ箱が入っていました。マロンは、「きっと、食べ物だ。『ミモザ』のチーズ入りパンかも知れない」と、ワクワクしてきました。「さあ、開けるよ」と、和くんが言いました。今度は一気に開きました。「あれ?」。箱の中には、また箱が入っていました。「何でしょう?」と、お母さんが言いました。
「ずいぶんと念入りだね」と、和くんが次の箱を開け始めました。マロンは、「もしかしたら、『ポモドーロ』の完熟トマトかも知れない」と、ドキドキしてきました。「あれ?どうしちゃったの?」と、和くんが言いました。それもそのはず、箱は開けても開けても、新しい箱が出てくるだけです。「どうして?」と、マロンも思いました。「ドッグフードかな?」。
和くんは、四つも五つも箱を開きました。八つも九つも箱を開きました。とうとう、十個目の箱を開く時がきました。十個目の箱は、香りの漂う木の箱でした。「今度こそ」と、和くんが箱を開けました。
箱のふたを開けると同時に「わあーーーぁ!」と、ありったけの大声が、家の中だけでなく、庭にも外の道路にまでも響きました。和くんは驚いて、箱を投げ出しました。マロンもビックリして、後ずさりしました。お母さんは両手で耳をおおいました。大声は、聞き覚えのある、あの明るいチカちゃんの声でした。マロンがソロリソロリと木の箱に近づき、「ドッグフード、ドッグフードはどこかな?」と、箱の中をのぞき込みました。箱の中には、他に何も入っていません。「大声だけで、他には何も入っていないなんて、おかしな宅配便?」と、マロンは思いました。
「ねえ、マロン。マロンの鼻の頭に花が咲いているわよ」と、和くんのお母さんが言いました。「どうしたのかしら?」。マロンは左右の目を寄せて、自分の鼻の頭を見てみました。「本当だ。黄色いパンジーが咲いてる」。「マロン、見てごらん。部屋の中も、花がいっぱい咲いている」と、和くんが言いました。「本当だ。テーブルの上にも窓辺にも、花がいっぱいだ」と、マロンは思いました。玄関のドアを開けて、キャンディーが飛び込んできました。「マロン。今ね、公園の花壇の花が一斉に開いたの。何があったのかしら?」と、キャンディーが言いました。「花壇だけじゃあなくて、池の周りの桜の木も、ピンク色に染まったの」。

「分かった!」と、マロンは言いました。「おかしな宅配便」に閉じ込められたチカちゃんの大声は、春を届けるステキな宅配便だったんです。「キャンディー、公園に行ってみよう」と、マロンは家を飛び出しました。「待って!」と、キャンディーが後を追いました。和くんも、和くんのお母さんも、表に飛び出しました。公園の方から、花の香りが春風に乗ってただよってきました。花の香りと一緒に、「わあーーーぁ!」と、どこからか、チカちゃんの、春を届けるあの大きな声も次々と聞こえてきました。チカちゃんの「おかしな宅配便」は街のみんなに届けられたようです。箱を開いた街のみんなが、続々と街角にあふれました。「えっ?あなたの街には、ですって?」。もう少しお待ちください。宅配便さんは、まだまだ、走り回っているはずです。
Posted by AKG(秋葉観光ガイド)の斉藤さん at 05:07│Comments(0)
│空飛ぶコーギー