森の童話館「空飛ぶコーギー」

　ピープー♪と、ポメラニアンのポテトが口を尖らせていました。「ポテチ。それ何？」と、「空飛ぶコーギー」のマロンが聞きました。ピー、プーとポテトが答えました。「ねえ、ねえ。僕にもやらせて」と、マロンが言いました。ピープー♪とポテトは言いました。ポテトが口にくわえていたのは、カラスノエンドウのサヤで作った草笛でした。

　「マロン。今から僕が言ったことを当ててね？」と、ポテトが言いました。ポテトはピーピープー♪と草笛を吹きました。「今、『沙織さん』って言った」と、マロンが言いました。「当たり。じゃあ、これは？」。ピピープー♪とポテトが吹きました。「『会いたいよう』って言った」と、マロンが答えました。「違うよ。『モモちゃん』って言ったんだよ」と、ポテトが言いました。「じゃあ、今度はこれ？」と、ポテトが吹きました。ピピーポーポー♪。「なーんだ？」と、ポテトが聞きました。「えー？もう一回やって？」と、マロンが言いました。ピピーポーポー♪。「分かった。『お腹がすいた』だ」。「当たりー」と、ポテトが言いました。今度はマロンが吹きました。ピピポポポー♪（遊びに行かない？）。ポポピー♪（うん、行く）。と、二匹は草笛で話しながら歩き始めました。

　ピープー♪ポーピー♪と二匹は歩きました。トイ・プードルのキャンディーと出会いました。ピピポポピー♪ポポポポピー♪。「やあ、キャンディー。こんにちは」のあいさつを、口を尖らせて草笛で吹きました。「何？」と、キャンディーには、何を言っているのか分かりませんでした。ピピポポピー♪ポポポポピー♪。「だから、何？」と、キャンディーが聞きました。「分かるよねえ？」と、マロンがポテトの顔を見て言いました。ポポ♪（うん）とポテトが答えました。

　プププピー♪（マロンちゃん）と向こうから三輪車の乗ったエリちゃんがキコキコとやってきました。ピピププー♪（エリちゃん）と、マロンが答えました。ププポピー♪（どこに行くの？）と、ポテトが聞きました。ポポピー♪（公園）と、エリちゃんが答えました。ピピポプープー♪（僕らも行く）と、マロンとポテトが草笛を吹きました。「もう、いい加減にして。何言ってるのか分からない」と、キャンディーがイライラしながら言いました。「そのうちに分かるようになるよ」と、マロンが言いました。「ハイ。キャンディーにも草笛をあげる」。

　キャンディーも草笛を口にくわえました。フーフーと吹いてみましたが、空気が出るだけで、ピーともポーとも鳴りませんでした。「こうやって、軽く歯でかむようにしてね…」と、マロンが教えてあげました。スースーとしか音はしませんでした。「こうやって、口を尖らせて…」と、ポテトも教えてあげました。それでも、音がしませんでした。エリちゃんが教えてあげました。「軽く軽くかんで、軽く軽く吹くの」。ポー♪とキャンディーの草笛が小さく鳴りました。「あっ、今、鳴ったわよね」と、キャンディーが嬉しそうに言いました。ポポピー♪（鳴った？）ピピ♪（鳴らない）と、マロンとポテトが草笛で話しました。ポーポーポー♪（ほら、鳴った！）と、キャンディーが草笛で言いました。ピピーポポー♪（本当だ！）と、今度は確かに聞こえました。

　ピープー♪と、マロンとポテトとキャンディーと三輪車に乗ったエリちゃんは歩きました。公園では、幼稚園の明子先生が草笛を吹いていました。ピープー♪と、草笛であいさつをしました。ピープー♪と、そろって歩き始めました。ピープー♪と、ツトムくんもやってきました。ピープー♪。わんぱくクッキーも「暖かくて、いい気持ちだね？」と、話しかけてきました。ピープー♪。公園のハトたちも飛んできました。ピープー♪。草笛の言葉は、誰でも分かります。ピープー♪。さっきまで分からなかったキャンディーだって、もう草笛で話しています。ピープー♪。「楽しいね」「ステキだね」。ピープー♪ピープー♪。初夏の青空に、草笛の言葉が響きました。