2021年01月11日
地下道の思い出
小学校の校門の前の道路を横切る地下道が、どこか遠くに通じているという噂を聞いたことがありますか?和くんや奈々ちゃんも、その噂話を聞いたことがありました。和くんの聞いた話だと「地下道は海岸とつながっていて、耳を澄ますと波の音が聞こえる」というものでした。奈々ちゃんたち女の子の間では、「山の奥にある神社に出られる」とかで「夜になると山の動物たちが地下道にやってくる声がする」という話でした。この噂はもうずいぶん前からあるらしく、「空飛ぶコーギー」のマロンも、仲良しのトイ・プードルのキャンディーも知っていました。でも、「まさか。そんなのって、ウソだよね」と、信じてはいませんでした。
にもかかわらず、マロンが突然「ねえ、キャンディー。地下道の話だけど、僕、あの地下道で、波の音を聞いちゃったんだ」と言い出したので、キャンディーは驚いてしまいました。「何言ってるの?」と、キャンディーは目を貝殻のようにして聞き返しました。「うん。昨日の夕方のことだけどね。あの地下道の近くを通ったんだ。そうしたらね、中からザザーザザーという波の音が聞こえてきて…」。「それって、自動車のエンジンの音かなんかの、聞き違いじゃないの?」と、キャンディーが言いました。「それならいいんだけど、さっきまた地下道を通ってみたら、中から昨日と同じ波の音が聞こえてきたんだもん」と、マロンが答えました。「ねえ、僕と一緒に行ってみて」。「…」。
マロンとキャンディーは、一緒に地下道に行ってみることにしました。途中で背中に袋を背負って忙しそうに歩くネズミのブレッドに行き会いました。「ブレッド。どこに行くの?」と、マロンが聞きました。ブレッドは「うん、ちょっとそこまで」と、意味もなく答えました。「ああ、分かった。またキューピッドのところでしょう?」と、キャンディーが冷やかしました。「ブレッド。あの地下道のことだけど、どこかに通じているらしいっていう噂、知ってる?」と、マロンが聞きました。「チュー。僕たちネズミ族の間では、山の田んぼに出られるっていう話だけどね。そこはいつでも実りの秋だって。実りの神様たちが太鼓を叩いて踊っていて、そりゃあ賑やからしい。その証拠に、友だちネズミはあそこで、稲のモミが落ちているのを見つけたこともあったよ」と、ブレッドは言って、行ってしまいました。
マロンとキャンディーは、片目の黒猫ジェイと行き会いました。「ジェイさん、コンニチハ。ジェイさんは、あの地下道の噂を知っていますか?」と、マロンが聞きました。黒猫のジェイは金色の三日月のような目をキラリと光らせて「知ってるよ。俺はあそこで、ひかれそうになったことがあるんだ。夜になると、ヘルメットをかぶった不良ネズミたちが、集団でオートバイを乗り回しているのさ。危うく、ひかれるところだったよ。地下道には、近寄らない方が賢明だな」といまいましそうに言い捨て、軽業のように身をひるがえして行ってしまいました。
「マロン、行くのやめようか」と、キャンディーが心配声で言いました。マロンとキャンディーはポメラニアンの(ポテチじゃあなくて)ポテトに行き会いました。ポテトは「僕は、狭くて暗いところは苦手だから行かないよー」と言いました。「ポテチ。そう言わずに、一緒に行こうよ」と、マロンが誘いました。「キャンキャン、絶対に行きませーん。それに、僕はポテチでもありませーん」と、ポテトは言いましたが、二匹の後を黙ってついてきました。

三匹の仲良しさんは地下道の入口に着きました。「ねえ、耳を澄まして」と、マロンが大きな耳をいっぱいに広げて言いました。「何か音がする」と、キャンディーが小さな声で言いました。ポテトは黙ってうなずきました。「誰かいるんじゃあない?」と、マロンが言いました。「誰かいるのよ」と、キャンディーが答えました。ポテトは黙ってうなずきました。地下道の中からは、何かしている気配と、ときどき子どもたちの話し声が聞こえました。「ポテチ。先に行って」と、マロンがポテトの背中をつつきました。(ポテチじゃあなくて)ポテトは体をよじって逃げました。仕方なしに、マロンは短い足で一歩ずつ地下道の階段を折り始めました。薄暗い地下道の中に、小さな電灯の明かりと、動く影が見えました。「誰かいる?」と、マロンが言いました。「不良ネズミ?」と、キャンディーが聞きました。暗さに慣れると、人影がぼんやりと見え始めました。「ア・キ・ラくん?」と、マロンが言いました。「ユ・イさんも?」と、キャンディーが言いました。すると、「マロンじゃないか」と、聞き覚えのある声。何と和くんでした。「キャンディーとポテチも一緒」と、奈々ちゃんもいました。ほかにも、小学校の仲間たちがおおぜいいました。三匹の仲良しさんはビックリ。「ゴメン、ゴメン。ビックリした?僕たちね、アキラさんの指導で、地下道の壁に絵を描いているんだ。思い出の絵をね」と、和くんが手にした絵筆を見せて言いました。
地下道のコンクリートの壁には白のペンキが塗られ、大きなキャンバスが出来上がっていました。そこには、街角や公園で遊ぶ子どもたちの笑顔のほか、地下道の噂話も描かれていました。男の子たちは、青い海と白い波の海岸を、女の子たちは森の動物たちの楽しい踊りの輪を、楽しく楽しく描いていました。「マロン。ここを見て!」と、恵子先生もいました。恵子先生が指差した地下道の天井には、青空を飛ぶコーギーの姿も描かれていました。「僕?」と、マロンが天井を見上げました。「わあ、マロン。良かったじゃない?」と、キャンディーが言いました。「こんなにデブ犬じゃないけど」と、マロンが暗がりの中で、少し不満そうな顔をしました。「まだ、描きかけだからね」と、アキラくんが言いました。「ポテチ。見て、見て。ここ」と、ユイさんが指差しました。そこには、ピンクの可愛らしい渦巻きキャンディーと小さな黒いジャガイモの絵が描かれていました。「キャンディーとポテチよ」と、奈々ちゃんが言いました。「わあ、そっくり」と、マロンが言いました。「キャンキャン。ちっとも似てないよ。それに僕の名前は、ポテチなんかじゃあない」と、(ポテチじゃあなくて)ポテトは言いました。
「さあ、みんなで手形を押しましょう」と、恵子先生が言いました。「賛成!」と、みんなはそれぞれ手にベッタリとペンキを付けて、地下道の壁に押し付けました。たくさんの手形が色とりどりに並びました。「さあ、マロンたちも足を出して」と、アキラくんが言いました。マロンとキャンディーとポテトの足形も並びました。ネズミのブレッドと子猫のキューピッドもやって来ました。いつの間にか黒猫ジェイも来ました。結局、マロンの仲間たちの足形も、仲良さそうに並びました。公園のハトの足形も並びました。街路樹のカタツムリおじさんの足形(?)も押されました。
バンザーイ!小学校の校門の前の薄暗かった地下道は、みんなの楽しい思い出の描かれた明るい地下道に生まれ変わりました。
にもかかわらず、マロンが突然「ねえ、キャンディー。地下道の話だけど、僕、あの地下道で、波の音を聞いちゃったんだ」と言い出したので、キャンディーは驚いてしまいました。「何言ってるの?」と、キャンディーは目を貝殻のようにして聞き返しました。「うん。昨日の夕方のことだけどね。あの地下道の近くを通ったんだ。そうしたらね、中からザザーザザーという波の音が聞こえてきて…」。「それって、自動車のエンジンの音かなんかの、聞き違いじゃないの?」と、キャンディーが言いました。「それならいいんだけど、さっきまた地下道を通ってみたら、中から昨日と同じ波の音が聞こえてきたんだもん」と、マロンが答えました。「ねえ、僕と一緒に行ってみて」。「…」。
マロンとキャンディーは、一緒に地下道に行ってみることにしました。途中で背中に袋を背負って忙しそうに歩くネズミのブレッドに行き会いました。「ブレッド。どこに行くの?」と、マロンが聞きました。ブレッドは「うん、ちょっとそこまで」と、意味もなく答えました。「ああ、分かった。またキューピッドのところでしょう?」と、キャンディーが冷やかしました。「ブレッド。あの地下道のことだけど、どこかに通じているらしいっていう噂、知ってる?」と、マロンが聞きました。「チュー。僕たちネズミ族の間では、山の田んぼに出られるっていう話だけどね。そこはいつでも実りの秋だって。実りの神様たちが太鼓を叩いて踊っていて、そりゃあ賑やからしい。その証拠に、友だちネズミはあそこで、稲のモミが落ちているのを見つけたこともあったよ」と、ブレッドは言って、行ってしまいました。
マロンとキャンディーは、片目の黒猫ジェイと行き会いました。「ジェイさん、コンニチハ。ジェイさんは、あの地下道の噂を知っていますか?」と、マロンが聞きました。黒猫のジェイは金色の三日月のような目をキラリと光らせて「知ってるよ。俺はあそこで、ひかれそうになったことがあるんだ。夜になると、ヘルメットをかぶった不良ネズミたちが、集団でオートバイを乗り回しているのさ。危うく、ひかれるところだったよ。地下道には、近寄らない方が賢明だな」といまいましそうに言い捨て、軽業のように身をひるがえして行ってしまいました。
「マロン、行くのやめようか」と、キャンディーが心配声で言いました。マロンとキャンディーはポメラニアンの(ポテチじゃあなくて)ポテトに行き会いました。ポテトは「僕は、狭くて暗いところは苦手だから行かないよー」と言いました。「ポテチ。そう言わずに、一緒に行こうよ」と、マロンが誘いました。「キャンキャン、絶対に行きませーん。それに、僕はポテチでもありませーん」と、ポテトは言いましたが、二匹の後を黙ってついてきました。

三匹の仲良しさんは地下道の入口に着きました。「ねえ、耳を澄まして」と、マロンが大きな耳をいっぱいに広げて言いました。「何か音がする」と、キャンディーが小さな声で言いました。ポテトは黙ってうなずきました。「誰かいるんじゃあない?」と、マロンが言いました。「誰かいるのよ」と、キャンディーが答えました。ポテトは黙ってうなずきました。地下道の中からは、何かしている気配と、ときどき子どもたちの話し声が聞こえました。「ポテチ。先に行って」と、マロンがポテトの背中をつつきました。(ポテチじゃあなくて)ポテトは体をよじって逃げました。仕方なしに、マロンは短い足で一歩ずつ地下道の階段を折り始めました。薄暗い地下道の中に、小さな電灯の明かりと、動く影が見えました。「誰かいる?」と、マロンが言いました。「不良ネズミ?」と、キャンディーが聞きました。暗さに慣れると、人影がぼんやりと見え始めました。「ア・キ・ラくん?」と、マロンが言いました。「ユ・イさんも?」と、キャンディーが言いました。すると、「マロンじゃないか」と、聞き覚えのある声。何と和くんでした。「キャンディーとポテチも一緒」と、奈々ちゃんもいました。ほかにも、小学校の仲間たちがおおぜいいました。三匹の仲良しさんはビックリ。「ゴメン、ゴメン。ビックリした?僕たちね、アキラさんの指導で、地下道の壁に絵を描いているんだ。思い出の絵をね」と、和くんが手にした絵筆を見せて言いました。
地下道のコンクリートの壁には白のペンキが塗られ、大きなキャンバスが出来上がっていました。そこには、街角や公園で遊ぶ子どもたちの笑顔のほか、地下道の噂話も描かれていました。男の子たちは、青い海と白い波の海岸を、女の子たちは森の動物たちの楽しい踊りの輪を、楽しく楽しく描いていました。「マロン。ここを見て!」と、恵子先生もいました。恵子先生が指差した地下道の天井には、青空を飛ぶコーギーの姿も描かれていました。「僕?」と、マロンが天井を見上げました。「わあ、マロン。良かったじゃない?」と、キャンディーが言いました。「こんなにデブ犬じゃないけど」と、マロンが暗がりの中で、少し不満そうな顔をしました。「まだ、描きかけだからね」と、アキラくんが言いました。「ポテチ。見て、見て。ここ」と、ユイさんが指差しました。そこには、ピンクの可愛らしい渦巻きキャンディーと小さな黒いジャガイモの絵が描かれていました。「キャンディーとポテチよ」と、奈々ちゃんが言いました。「わあ、そっくり」と、マロンが言いました。「キャンキャン。ちっとも似てないよ。それに僕の名前は、ポテチなんかじゃあない」と、(ポテチじゃあなくて)ポテトは言いました。
「さあ、みんなで手形を押しましょう」と、恵子先生が言いました。「賛成!」と、みんなはそれぞれ手にベッタリとペンキを付けて、地下道の壁に押し付けました。たくさんの手形が色とりどりに並びました。「さあ、マロンたちも足を出して」と、アキラくんが言いました。マロンとキャンディーとポテトの足形も並びました。ネズミのブレッドと子猫のキューピッドもやって来ました。いつの間にか黒猫ジェイも来ました。結局、マロンの仲間たちの足形も、仲良さそうに並びました。公園のハトの足形も並びました。街路樹のカタツムリおじさんの足形(?)も押されました。
バンザーイ!小学校の校門の前の薄暗かった地下道は、みんなの楽しい思い出の描かれた明るい地下道に生まれ変わりました。
Posted by AKG(秋葉観光ガイド)の斉藤さん at 05:28│Comments(0)
│空飛ぶコーギー