2020年12月19日
ドマーニのお手柄
今朝はすっかり冷え込み、寒い朝となりました。マロンの水鉢の水が氷っていました。マロンが短い前足で鉢をひっくり返したら、鉢の形のままの氷が、コロリと出ていました。「ふーん。透き通っていて雪のように冷たくて、これって何?」と、マロンが聞きました。「ブルブル。寒いねえ」と、花壇の土から顔を出したアマガエルが言いました。「ああ、これは氷だよ。あまり寒いと、水がこんなに硬くなっちゃうんだよ。まだまだ、僕たちの起きる季節じゃあなさそうだね」と、慌てて顔を引っ込めました。「コ・オ・リ?」。
そんな寒い日曜日の朝でも、マロンは散歩を欠かしません。白い息をハアハアと吐きながら、公園にやって来ました。「寒いなあ」と、短い足でパタパタ歩いてきました。さすがに、いつもの公園みたいには、人も犬もいません。芝生も霜で真っ白になっていました。「おお、寒!」と言いながら、マロンは池のほとりに向かいました。
「あれ?」と、マロンは頭を傾けました。池ではいつものようにカルガモの家族が遊んでいます。でも、ちょっと違うのは、スイスイと泳ぐのではなく、水の上を歩いているのです。お父さんカモの後ろにお母さんカモ、その後ろに5羽の子ガモがヨチヨチと続いています。マロンは池に近づき、短い前足で、トントンとしてみました。「コ・オ・リ?」とマロンは、さっきアマガエルに教えてもらった氷のことを思い出しました。「歩けるんだ」と、マロンはちょっぴり嬉しくなりました。
その時、カルガモの家族を追って、ヨチヨチ歩きの誰かの姿が見えました。「誰?あっ、愛ちゃんだ」と、マロンは少し心配なりました。「愛ちゃんダメ!戻ってらっしゃい」と叫ぶ、愛ちゃんのお母さんの声がしました。愛ちゃんはお構いなしに、カルガモの家族を追いかけて、池の真ん中まで来てしまいました。「危ない!」と、マロンが叫んだとき、ヨチヨチ歩きの愛ちゃんはステンと転んでしまいました。転んだ拍子に池の氷が割れて、愛ちゃんの体が、池に落ちました。ガアガアガアとカルガモのお父さんが助けを呼びました。「愛ちゃん、待っていてね」と、愛ちゃんのお母さんが、氷の上に一歩踏み出しました。パリンと薄い氷はすぐに割れてしまいます。別のところでやってみましたが、やはり薄い氷はすぐに割れてしまいました。「困ったわ。誰かいないかしら」と、愛ちゃんのお母さんの心配そうな声が響きましが、見回してみても誰もいません。
マロンが、そーっと短い足を氷の上に運びました。「だいじょうぶ?」と、一歩、二歩と歩いてみました。大丈夫そうです。三歩、四歩。まだ、大丈夫です。マロンは、少しずつ少しずつ、愛ちゃんに近づきました。やがて愛ちゃんのところにたどり着き、愛ちゃんの服を口にくわえました。そーっと、そーっと引っ張ってみます。「マロン、頑張れ!」と、カルガモの家族が応援してくれました。「もう少し」と、マロンが思った瞬間、薄い氷がミシミシと音を立てて割れ、愛ちゃんとマロンの体は、池の中に消えてしまいました。ガアガアガアとカルガモの家族が騒ぎます。「マロン、落ち着いて。泳いでごらん」と、カルガモのお父さんが声をかけました。「僕、僕、泳げないんだ」と、マロンは短い足をバタつかせて、情けない声で言いました。「ええ?犬なのに泳げないの?」と、カルガモの子供たちは言いました。
「愛ちゃん、頑張るのよ!」と愛ちゃんのお母さんが声を張り上げました。その時、トイ・プードルのキャンディーが通りかかりました。「まあ、マロン。何してるの?」と、冷たい池の真ん中で短い足をバタバタさせているマロンに声をかけました。「キャンディー、助けて!」と、マロンが悲鳴を上げました。「コ・オ・リが割れて…。愛ちゃん、愛ちゃんも一緒」。「キャンディー、急いで泳いできてくれ!」と、カルガモのお父さんが叫びました。「えー?だって、私だって泳げないもん」と、キャンディーは申し訳なさそうに言いました。「ああ、僕らには、泳げないなんて信じられない」と、カルガモの家族は空を見上げました。
「マロン、待っててね」と言って、キャンディーが駆け出しました。キャンディーはわき目もふらずに走りました。
キャンディーはすぐに戻ってきました。キャンディーと一緒に走ってきたのは、セントバーナードのドマーニおじさんです。ドマーニは何も言わずに、氷の池に足を運びました。体の重みで氷が割れて、池の水が顔を出しました。ドマーニはじょうずに泳いで、グングンとマロンと愛ちゃんに近づきました。ミシミシと氷をかき分けて泳ぎました。「ドマーニ。お願いね」とキャンディーが声をかけました。「お願い、愛ちゃんを助けて」と、愛ちゃんのお母さんも手を合わせました。ドマーニの大きな体が、愛ちゃんの後ろに回りました。さっきのマロンと同じように、愛ちゃんの服のエリをくわえて、岸に向かって泳ぎ出しました。「ああ、良かった。愛ちゃんが助かった」と、安心したせいか、マロンの姿が池の中に消えました。
愛ちゃんを岸に引き上げたあと、ドマーニは再び、池の中のマロンを助けに向かいました。「マロン、自分で泳いでごらんよ」と、ドマーニが声をかけました。マロンは黙ったままです。「僕、泳げない」と、か細い声でマロンが言いました。「仕方ないなあ」と、ドマーニはマロンの首の後ろをくわえて、岸へと連れ戻りました。
愛ちゃんと愛ちゃんのお母さんのところに、『ポモドーロ』のシェフが、大きなタオルを持って走ってきました。「もう、大丈夫だからね」と、愛ちゃんの体をゴシゴシとこすって温めました。「ふう、助かったみたい」と、マロンは弱々しく体を震わせました。「ドマーニは、昔、災害救助犬だったんだ。歳をとって引退して、僕たちのところにやってきたんだけどね」と、シェフが言いました。「ドマーニ、助けてもらって、本当にありがとう」と、愛ちゃんのお母さんが言いました。「本当に良かった。ドマーニがいなかったら、大変なことになっていたかも知れない。ドマーニのお手柄だったね」と、シェフがドマーニの頭を優しくなでました。

ハクション!とマロンが大きなクシャミをして、体を震わせました。「僕、死ぬかと思ったよ。ドマーニおじさんありがとう」と、マロンもお礼を言いました。いつの間にか、カルガモの家族も岸に上がっていました。「ガアガアガア。泳げない犬がいるなんて、信じられない」と、呆れていました。「マロン。空を飛ぶのもいいけど、泳ぎも覚えないとね」と、低い声でドマーニが言いました。ハクション!と、マロンがまた一つ大きなクシャミをしました。「マロンだって、とても勇気があったわ。ステキよ」と、キャンディーがマロンの耳元でそっとささやきました。ハクション!
そんな寒い日曜日の朝でも、マロンは散歩を欠かしません。白い息をハアハアと吐きながら、公園にやって来ました。「寒いなあ」と、短い足でパタパタ歩いてきました。さすがに、いつもの公園みたいには、人も犬もいません。芝生も霜で真っ白になっていました。「おお、寒!」と言いながら、マロンは池のほとりに向かいました。
「あれ?」と、マロンは頭を傾けました。池ではいつものようにカルガモの家族が遊んでいます。でも、ちょっと違うのは、スイスイと泳ぐのではなく、水の上を歩いているのです。お父さんカモの後ろにお母さんカモ、その後ろに5羽の子ガモがヨチヨチと続いています。マロンは池に近づき、短い前足で、トントンとしてみました。「コ・オ・リ?」とマロンは、さっきアマガエルに教えてもらった氷のことを思い出しました。「歩けるんだ」と、マロンはちょっぴり嬉しくなりました。
その時、カルガモの家族を追って、ヨチヨチ歩きの誰かの姿が見えました。「誰?あっ、愛ちゃんだ」と、マロンは少し心配なりました。「愛ちゃんダメ!戻ってらっしゃい」と叫ぶ、愛ちゃんのお母さんの声がしました。愛ちゃんはお構いなしに、カルガモの家族を追いかけて、池の真ん中まで来てしまいました。「危ない!」と、マロンが叫んだとき、ヨチヨチ歩きの愛ちゃんはステンと転んでしまいました。転んだ拍子に池の氷が割れて、愛ちゃんの体が、池に落ちました。ガアガアガアとカルガモのお父さんが助けを呼びました。「愛ちゃん、待っていてね」と、愛ちゃんのお母さんが、氷の上に一歩踏み出しました。パリンと薄い氷はすぐに割れてしまいます。別のところでやってみましたが、やはり薄い氷はすぐに割れてしまいました。「困ったわ。誰かいないかしら」と、愛ちゃんのお母さんの心配そうな声が響きましが、見回してみても誰もいません。
マロンが、そーっと短い足を氷の上に運びました。「だいじょうぶ?」と、一歩、二歩と歩いてみました。大丈夫そうです。三歩、四歩。まだ、大丈夫です。マロンは、少しずつ少しずつ、愛ちゃんに近づきました。やがて愛ちゃんのところにたどり着き、愛ちゃんの服を口にくわえました。そーっと、そーっと引っ張ってみます。「マロン、頑張れ!」と、カルガモの家族が応援してくれました。「もう少し」と、マロンが思った瞬間、薄い氷がミシミシと音を立てて割れ、愛ちゃんとマロンの体は、池の中に消えてしまいました。ガアガアガアとカルガモの家族が騒ぎます。「マロン、落ち着いて。泳いでごらん」と、カルガモのお父さんが声をかけました。「僕、僕、泳げないんだ」と、マロンは短い足をバタつかせて、情けない声で言いました。「ええ?犬なのに泳げないの?」と、カルガモの子供たちは言いました。
「愛ちゃん、頑張るのよ!」と愛ちゃんのお母さんが声を張り上げました。その時、トイ・プードルのキャンディーが通りかかりました。「まあ、マロン。何してるの?」と、冷たい池の真ん中で短い足をバタバタさせているマロンに声をかけました。「キャンディー、助けて!」と、マロンが悲鳴を上げました。「コ・オ・リが割れて…。愛ちゃん、愛ちゃんも一緒」。「キャンディー、急いで泳いできてくれ!」と、カルガモのお父さんが叫びました。「えー?だって、私だって泳げないもん」と、キャンディーは申し訳なさそうに言いました。「ああ、僕らには、泳げないなんて信じられない」と、カルガモの家族は空を見上げました。
「マロン、待っててね」と言って、キャンディーが駆け出しました。キャンディーはわき目もふらずに走りました。
キャンディーはすぐに戻ってきました。キャンディーと一緒に走ってきたのは、セントバーナードのドマーニおじさんです。ドマーニは何も言わずに、氷の池に足を運びました。体の重みで氷が割れて、池の水が顔を出しました。ドマーニはじょうずに泳いで、グングンとマロンと愛ちゃんに近づきました。ミシミシと氷をかき分けて泳ぎました。「ドマーニ。お願いね」とキャンディーが声をかけました。「お願い、愛ちゃんを助けて」と、愛ちゃんのお母さんも手を合わせました。ドマーニの大きな体が、愛ちゃんの後ろに回りました。さっきのマロンと同じように、愛ちゃんの服のエリをくわえて、岸に向かって泳ぎ出しました。「ああ、良かった。愛ちゃんが助かった」と、安心したせいか、マロンの姿が池の中に消えました。
愛ちゃんを岸に引き上げたあと、ドマーニは再び、池の中のマロンを助けに向かいました。「マロン、自分で泳いでごらんよ」と、ドマーニが声をかけました。マロンは黙ったままです。「僕、泳げない」と、か細い声でマロンが言いました。「仕方ないなあ」と、ドマーニはマロンの首の後ろをくわえて、岸へと連れ戻りました。
愛ちゃんと愛ちゃんのお母さんのところに、『ポモドーロ』のシェフが、大きなタオルを持って走ってきました。「もう、大丈夫だからね」と、愛ちゃんの体をゴシゴシとこすって温めました。「ふう、助かったみたい」と、マロンは弱々しく体を震わせました。「ドマーニは、昔、災害救助犬だったんだ。歳をとって引退して、僕たちのところにやってきたんだけどね」と、シェフが言いました。「ドマーニ、助けてもらって、本当にありがとう」と、愛ちゃんのお母さんが言いました。「本当に良かった。ドマーニがいなかったら、大変なことになっていたかも知れない。ドマーニのお手柄だったね」と、シェフがドマーニの頭を優しくなでました。

ハクション!とマロンが大きなクシャミをして、体を震わせました。「僕、死ぬかと思ったよ。ドマーニおじさんありがとう」と、マロンもお礼を言いました。いつの間にか、カルガモの家族も岸に上がっていました。「ガアガアガア。泳げない犬がいるなんて、信じられない」と、呆れていました。「マロン。空を飛ぶのもいいけど、泳ぎも覚えないとね」と、低い声でドマーニが言いました。ハクション!と、マロンがまた一つ大きなクシャミをしました。「マロンだって、とても勇気があったわ。ステキよ」と、キャンディーがマロンの耳元でそっとささやきました。ハクション!
Posted by AKG(秋葉観光ガイド)の斉藤さん at 04:53│Comments(0)
│空飛ぶコーギー