手を洗いましょう!

AKG(秋葉観光ガイド)の斉藤さん

2021年07月27日 05:31

 「ねえ、マロン。マロンは食事の前に手を洗う?」と、ポメラニアンのポテトが突然聞きました。「何?手を洗う?だって、僕ら、食事の時に手なんか使わないよ」と、コーギーのマロンが答えました。「何でそんなこと聞くの?」。「うん。リナちゃんがね。『食事の前には手を洗いなさい!』って。そうしないと『お腹が痛くなりますよ』だって」と、ポテトが言いました。「どう思う?」。

 「マロンちゃんも、ちゃんと手を洗いなさい」と、リナちゃんが本当に言いました。「僕らは食事の時に手なんか使わないよ。だから洗わなくてもいいの」と、マロンが言いました。「リナだって、お箸とかスプーンとかを使うのよ。でも、手は洗わないとね。暑い季節は特に危険。恐い恐い食中毒で、お腹が痛くなっても知らないよ」。

 それから、マロンは気になってしかたありませんでした。考えてみれば、マロンたち犬は、いつも裸足です。アスファルトの上も土の上も、裸足で歩いて、裸足で駆け回って…。「う~ん。僕も前足を洗った方がいいのかなあ?」と、ちょっとだけ心配になってきました。公園に行った時、マロンは水飲み場の水道をひねって、前足をゴシゴシしてみました。「わっ、こんなに水が汚くなるってことは、それだけ汚れているってことだね?もしかしたら、細菌がウヨウヨいるのかも」。

 「マロンちゃん。オシッコの後にも、手を洗いましょう」と、リナちゃんがまた言いました。「ええ?オシッコの後にも?」と、マロンが言いました。「それができない子は、1年生になれないよ」。「そんなことする犬なんて、いないよ」と、マロンが小さな声で言いました。でも、「う~ん。1年生になれないのも困るかな?」と、ちょっとだけ気になってきました。マロンは水飲み場の水道で、前足をゴシゴシしてみました。「別に悪い気持ちはしないよね」。 

 「石鹸をつけて洗いましょう」と、またまたリナちゃんに見つかってしまいました。「ええ?石鹸?」。「そうなんだって。僕も言われちゃった」と、ポテトも首をかしげました。「指の間もゴシゴシ。手の平だってゴシゴシ。親指だって忘れずゴシゴシ」と、リナちゃんが言いました。「きちんと手洗いをすれば、風邪だってひかないのよ。外から帰った時もね…」。マロンもポテトも石鹸の泡をブクブクさせて前足を洗いました。「僕たちきっと、日本一きれい好きの犬だね」。

 「マロン。ご飯だよ」と、和くんが呼んでいます。「はーい!」と、マロンはおうちに飛び込み、真っ先に洗面所へ。水道をジャーッとひねって、石鹸ブクブク。オシッコの後にも、石鹸ブクブク。外から帰れば、石鹸ブクブク。出かける前にも、石鹸ブクブク前足ゴシゴシ。「マロンの手洗い、いつまで続くかな?」と、和くんが言いました。マロンの顔の前でブクブク石鹸が弾けました。マロンのため息で、ブクブクが舞い上がりました。「これって、シャボン玉みたい」と、マロンがニヤリと笑いました。マロンが口を尖らせて、ブクブクをフーっと吹きました。「わあ、面白い」。マロンはブクブクを和くん目がけてフーッとしました。虹色のブクブクが窓から外へ、外から空へと舞い上がりました。「そろそろ、マロンのいたずらが始まったな」と、和くんが言いました。「フー!和くんも、手を洗いましょう!」。

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