僕の入道雲
夏空にはモクモクと入道雲が湧き上がっていました。「空飛ぶコーギー」のマロンは「入道雲って、フワフワしてて気持ちが良さそう。僕も、あの入道雲が欲しいな」と、考えていました。マロンは早速、入道雲を求めて飛び上がりました。
マロンが入道雲に近づくと、入道雲の頭はもっと高く湧き上がり、高く高く見上げるほどでした。マロンは入道雲を追いかけて飛びました。すると、入道雲の肩の辺りに、カミナリさまの子どもが数人遊んでいました。「あれ?お前、マロンだろう?」と、カミナリさまの子どもが言いました。「そうだよ。空飛ぶコーギーのマロンだよ」と、マロンは答えました。「この入道雲は、君たちのもの?」と、マロンが聞きました。カミナリさまの子どもはクスッと笑い、「僕たちのものだけど、マロンが欲しいのなら売ってあげてもいいよ」と言いました。「売ってくれるの?でも、僕、お金が…」と、マロンが言いました。「葉っぱのお金で払ってくれればいいよ」と、カミナリさまの子どもは言いました。「葉っぱのお金か。じゃあ、僕、探してくる」と、マロンは公園に向かって降りて来ました。
マロンは、葉っぱのお金を探しました。「お金、お金。葉っぱのお金。誰か葉っぱのお金を知らない?」。「葉っぱのお金なら、ここにあるよ。ジージー♪」と、アブラゼミが鳴きました。それは、カシの木の葉っぱでした。マロンは葉っぱを持って、モクモク湧き上がる入道雲を追いかけました。さっきのカミナリさまの子どもたちが遊んでいました。「はい。葉っぱのお金」と、マロンはカシの木の葉を差し出しました。「じゃあ、この入道雲はマロンのだ。好きに使っていいよ」と、カミナリさまの子どもが言いました。
「僕の入道雲だ!」と、マロンはフワフワ入道雲の上でピョンピョンしました。今度は、逆立ちして、でんぐり返り。お腹でフワフワ。お尻でフワフワ。「柔らかくて、いい気持ち」。入道雲はどんどん高く湧き上がりました。マロンはニコニコ笑顔で地上に降りました。
「見て!僕の入道雲だよ」と、マロンは言いました。ポメラニアンのポテトがそれを聞きました。「ええ?あの入道雲は僕のだよ」と、ポテトが言いました。「あの雲って?」と、マロンが聞きました。「あの、一番背が高くて強そうな入道雲」と、ポテトが答えました。「僕は、カミナリさまの子どもに、葉っぱのお金を払ったんだよ」と、マロンが言いました。「僕だって、カミナリさまの子どもに、葉っぱのお金で払ったもん」と、ポテトも言いました。「あら?私だってそうよ」と、トイ・プードルのキャンディーが言いました。「カシの木の葉でね」。「僕の入道雲!」「僕のだよ!」「私のよ!」と、3匹は大きな声で言い合いました。
「マロンちゃん。私、カミナリさまから入道雲を買ったのよ」と、1年生のリナちゃんがスキップを踏んでやってきました。「リナちゃんも?」。「だって、ソフトクリームみたいな入道雲が欲しかったんだもん」と、リナちゃんが言いました。「そうか。入道雲は、僕たちみんなのものなんだ」と、マロンが言いました。「そうだね。入道雲はみんなのものだね」と、ポテトも言いました。おやおや、夏休みの空の天井に、入道雲の頭がくっつきそう。カミナリさまの子どもたちが撒いたカシの木の葉のお金が、高い空から舞って来ました。
関連記事