小さな青い花
降り始めた雨から逃れるように走る「空飛ぶコーギー」のマロンの目に、小さな青い花が見えました。「おや?」と、マロンは立ち止まり、じっと見つめました。「きれいな花。でも、この間までは咲いていなかったけどね…」と、つぶやきました。「この花の名前は?」と、マロンは聞きました。でも、犬も人も誰も立ち止まってはくれないし、鳥も虫も誰も花を気にしてはいませんでした。「ねえ。誰か、教えて?この花の名前は?」。
マロンは、小さな青い花を摘みました。小さな青い花を摘んで帰り、ケロちゃんの空き缶に挿しました。「ケロ♪」。「ねえ。この花の名前は?」と聞きましたが、ケロちゃんは「ケロ♪」と答えるだけでした。「誰か、教えてくれないかなあ?」と、マロンは言いましたが、言ってるうちにしおれてしまいました。「あれ?もう閉じちゃった」。
次の日、ポメラニアンのポテトも公園の小道で、小さな青い花を見つけました。「きれいな花。花びらが青くて、黄色の雄しべがのぞいていて…。この花の名前は?」と、ポテトは考えました。「ねえ、ねえ。誰か、この花の名前を教えて?」。でも、そよ風も朝露も何も答えてくれないし、ジャングルジムもブランコも誰も教えてくれませんでした。
ポテトは、小さな青い花を摘みました。教えてくれそうな誰かを探しました。向こうから、マロンが歩いてきました。「やあ、ポテチ。おはよう。毎日、ジメジメしてうっとうしいね」と、マロンが言いました。「あれ?その花は…」。「ねえ、マロン。この小さな青い花は、何の花?」と、ポテトが聞きました。「僕も昨日見つけたんだけど、名前が分からないんだ。すぐに閉じちゃったし…」と、マロンが言いました。「そうなんだ。すぐに閉じちゃうんだ。アサガオみたい」と、ポテトが小さな青い花をあらためて眺めました。「でも、雨の季節にぴったりの花だね」。
小さな青い花は、朝露をいっぱい溜めていました。溜まった朝露の水滴が、キラリと光っていました。「まるで宝石みたいだね」と、マロンが言いました。「本当だ。宝石みたいだ」と、ポテトも言いました。「名前が知りたいね?」「誰か、教えてくれないかな?」。
「何を知りたいのかな?」と、物知りなカタツムリのおじさんが顔を出しました。「おじさん。この小さな青い花の名前を知りたいんです」と、マロンが言いました。「この花は『ツユクサ』という名前じゃよ。ホタルの舞う頃から咲き始めるから、ちょうど今頃からかな。でも、咲いた花は、昼には閉じてしまう。はかない花だね」と、カタツムリのおじさんが教えてくれました。「朝寝坊してると、見られないね」と、ポテトがマロンの顔を見ながら言いました。「今の季節にぴったりの名前だね」と、マロンが言いました。「そうだね。今は『梅雨』だもんね」と、ポテトも言いました。「『梅雨』じゃなくて、『露』じゃよ。君たちが見た朝露の『露』。宝石のように光る『露』の意味じゃよ」と、カタツムリのおじさんが言いました。「まるで朝のホタルみたいだろう?」。「うんうん。本当に、ツユクサは朝光るホタルの花だ」と、マロンとポテトがそろってうなずきました。
「ねえ。マロン。これって、サムライNIPPONの色に似ていない?」と、ポテトがニヤッと笑いながら言いました。「似てる、似てる」と、マロンもニヤッとしました。「おいおい。結局、今日もジーコJAPANの話題かい?」と、カタツムリのおじさんが言いました。「そりゃ、そうだよ。まだ、クロアチアとブラジル戦が残っているからね」「このツユクサで応援しよう!」。NIPPONチャチャチャ!
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